3/11 勉強会

【研究報告】

担当:坂本さん

タイトル:第一足根中足関節の形態学的特徴と関節軟骨変性との関係

  • 背景:第一足根中足関節(TMT関節)の不安定性は外反母趾の発生と関連するとされているが,その不安定性の生じる要因は明かでない.
  • 目的:TMT関節の骨構造・靱帯形態と関節軟骨変性との関係を調査した.
  • 方法:実験1では,ホルマリン固定遺体50体100足を対象とした.TMT関節の関節面形態は,関節面内側の括れによる上下関節面の分離,および下外側関節面の有無に基づき,4つのTypeに分類した: Type Ⅰ, 関節面が上下に分離し下外側関節面の無い1関節面; Type Ⅱ-a, 関節面が上下に分離し下外側関節面の無い2関節面; Type Ⅱ-b,関節面が上下に分離せず下外側関節面の無い2関節面; Type 3, 関節面が上下に分離し下外側関節面の有る3関節面.関節面のTypeが一致しない足部はUnpairとして分類した.Type間での関節軟骨変性の重症度を比較した.実験2では,ホルマリン固定遺体30体60足を対象とし,底側,背側,内側の第一足根中足靱帯の形態学的特徴(長さ,幅,厚み)と関節軟骨変性の重症度との関係を調査した.
  • 結果:実験1では,Type Ⅱa, Ⅱb, Unpairの足部と比較し,Type Ⅲの足部で,関節軟骨変性の重症度が低値を示した.実験2では,底側第一足根中足靱帯の幅と厚みが,TMT関節の関節軟骨変性の重症度と有意な負の相関関係を示した.したがって,3関節面の足部,底側第一足根中足靱帯の幅・厚みが大きい足部では,関節安定性が高い可能性が示唆された.
  • 結論:今回の結果より,関節安定性と関連する可能性のある「関節面構造」,「底側第一足根中足靱帯の形態」を生体で評価可能な手法を確立し,外反母趾症例で比較する.

【文献抄読】

担当:高橋さん

タイトル:Eye movement patterns during viewing face images with neutral expressions in patients with early-stage Alzheimer’s disease and amnestic mild cognitive impairment

出典:Eraslan Boz et al., Alzheimers Dement. 2024. 20(2):759-768. doi: 10.1002/alz.13478

  • 目的:初期段階のAD,aMCI患者およびHCの顔画像を見ているときの眼球の動きについて分析する.
  • 方法:白十字の注視マークを灰色の背景に1000ミリ秒間表示した.その後,練習試行では顔画像を対象者に向けて5000ミリ秒,本試行では3000ミリ秒表示した.試行間には,試行間の間に黒い背景に対して刺激と同じサイズの灰色の空間を2000ミリ秒表示した.
  • 結果:ADはaMCIやHCと比較して,鼻や口のIAよりも目のIAをあまり見ていないことが示された.グループに関係なく,対象者は,目と鼻のIAを,関心のある口のIAでより長く観察した.さらに,対象者の目のIAに対する最初の注視時間は,鼻や口の注視時間よりも短かった.
  • 考察:仮説と一致して,ADの患者は顔を表面的に見ており,目や鼻などの情報を与える部分にはあまり注目していなかった.顔のIAに注意を払えないことにより,AD患者では顔の知覚に困難が生じる可能性がある.AD患者の顔への視線の減少は,顔の処理の困難に関連している可能性がある.顔の表情認識と顔の記憶の障害は,AD の多くの研究で示されている.
  • 結論:ADの顔処理における眼球運動の違いを明らかにすることができた.