11/18勉強会

【研究報告】

担当:早尾先生

タイトル:がん患者の術後の身体組成と身体活動量に関する研究

  • 背景・目的:胃がん術後には,体脂肪,骨格筋,骨といった身体組成の変化がみられる.これらの変化による運動器の機能低下は,身体活動量の減少やADL(Activities of Daily Living)の範囲の縮小,さらには転倒のリスク増加につながる可能性がある.しかし,胃がん術後の身体組成や身体活動量の経時的変化に関する報告は少ない.そこで本研究では,胃がん術後1,3,6,12か月における身体組成および身体活動量の変化を調査した.
  • 方法:胃がん患者を対象に,術前および術後1,3,6,12か月の時点で体重,体脂肪率,四肢骨格筋量,大腿骨骨密度を計測した.また,活動量計を用いて身体活動量を計測した.
  • 結果:術後1,3,6,12か月において,体重,体脂肪率,四肢骨格筋量,大腿骨骨密度の低下が確認されたが,各パラメータの低下率が最大となる時期には違いがみられた.また,身体活動量は術後1か月および3か月で低下する傾向を示した.

【文献抄読】

担当:黒崎さん

タイトル:Cortical compensation mechanism for swallowing recovery in patients with medullary infarction-induced dysphagia

出典:Furong et al., Front Neurol. 2024. 15: 1346522. doi:10.3389/fnins.2023.1198222

  • 背景・目的延髄梗塞では重度の嚥下障害が起こりやすく,その回復には嚥下リハビリテーションが不可欠である.本研究では延髄梗塞急性期と嚥下障害回復後の皮質活性化を比較し, 嚥下障害の回復に関与する皮質代償メカニズムを解明することを目的とした.
  • 方法:急性期の延髄梗塞患者15名を対象にfMRIを用いて,通常の唾液嚥下と努力嚥下の際の脳活動を測定した.嚥下機能の回復過程における脳活動を評価するため,発症直後と4週間のリハビリテーション後に脳活動を測定した.
  • 結果:急性期では唾液嚥下時に中心前回と左舌状回のみが部分的に活性化し,努力嚥下時には,より広範な脳領域が活性化することが確認された.リハビリテーション後では唾液嚥下中の皮質活性化が健常者と類似しており,努力嚥下により左補足運動野,右緑状回,左中心後回の活性化がわずかに増加した.
  • 結論:延髄梗塞患者において, 感覚に関連する領域が嚥下機能の回復において代償的な役割を果たしている可能性が示唆された. また, 延髄梗塞後の努力的な唾液嚥下は, 嚥下関連領域の活性化を促進し, 効果的なリハビリテーション方法としての有用性が示唆された.