1/20勉強会

【研究報告】

担当:高橋 (壮) さん

タイトル:視線追跡による認知機能評価および軽度認知障害の早期発見

  • 背景・目的:軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment,MCI)から認知症の段階に移行すると回復は困難であるが,MCIの段階で発見することができれば健常状態に回復することが可能である.そのため,MCIの早期発見が認知症予防に重要となる.MCIにおける視線追跡の研究はいくつか報告されており,視線の動きに特徴がある.視線追跡による認知機能評価と臨床診断との関係性はまだ明らかになっておらず,視線追跡による認知機能検査の診断結果と臨床診断が一致すれば,視線追跡による認知機能検査でMCIの早期発見が可能となる.本研究の目的は視線追跡による認知機能検査はMCIの早期発見が可能か検討することである.この目的を達成するために,対象者が視線追跡のみで認知機能の評価が可能か,視線追跡による認知機能検査の診断結果と臨床診断が一致するかについて検討する.
  • 方法:通常月経周期女性13名の卵胞期,排卵期,および黄体期に,NO合成酵素阻害薬の経皮投与後,アセチルコリンとカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の経皮投与(大腿部)と局所加温(前腕部)を行った.また,大腿部の異なる部位にニトロプルシドナトリウム(SNP)を経皮投与した.皮膚血流量をレーザードップラー法により測定した.
  • 結果:アセチルコリン,CGRP,および局所加温が誘発した皮膚血管拡張反応およびそれにおけるNOの寄与程度とSNP誘発性皮膚血管拡張反応は卵胞期,排卵期,および黄体期の間で差がなく,またそれらと血漿女性ホルモン濃度との間に関係性はなかった.
  • 結論:月経周期は内皮依存性皮膚血管拡張反応とそれにおけるNOの寄与と,内皮非依存性皮膚血管拡張反応に影響しない.

【文献抄読】

担当:島谷さん

タイトル:Beyond weakness: Exploring intramuscular fat and quadriceps atrophy in ACLR recovery

出典:White et al., J Orthop Res. 42(11):2485-2494. doi: 10.1002/jor.25910

  • 背景・目的:前十字靱帯再建術(ACLR)後の筋力低下は,外傷後変形性関節症(OA)のリスクを高める.ただし,筋力低下のみに焦点を当てると,筋力の回復を妨げる可能性のある筋肉組成などの他の要因が見落とされる.筋内脂肪は,特発性OAにおける関節変性に関連する非収縮要素だが,ACLR 後のその役割は十分に研究されていない.このギャップを埋めるために,ACLR の参加者の大腿四頭筋の体積と筋内脂肪を特徴付けること,ACLR群および健常群の筋内脂肪と筋肉量と等尺性筋力との関連性も調査することを目的とした.
  • 方法・結果:対象者が視線追跡のみで認知機能の評価が可能かについての検討では,視線追跡による認知機能の評価に認知機能セルフチェッカー(Virtual Reality device-Examination,VR-E)を用いた.また,VR-Eについてアンケート調査を行った.VR-Eの検査時間は5分程度であり,解答方法は問いの答えを注視するのみである.検査は判断,空間認知,計算,言語,記憶の課題から構成される15問で評価した.76点以上でA,51~75点でB,50点以下でC評価となる.対象者は高齢者14人であり,14人中3人は視力が低くVR-Eについて,位置合わせに時間がかかり検査時間が長く,装置の扱いが難しいと回答した.検査難易度は全員がちょうどよいと回答し,検査難易度は適正であったと考えられる.VR-Eにおける得点(以下VR-E得点)の平均点は78.0±28.8点で14人中11人がA評価であり,高齢者が視線追跡のみで認知機能の評価を行うことができたと考えられる. 視線追跡による認知機能検査の診断結果と臨床診断が一致するかについての検討でもVR-Eを用いた.対象者は健常者(Healthy Control,HC)やMCI,アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease,AD)と診断された143人とし,ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination,MMSE),日本語版モントリオール認知評価(Japanese Version of The Montreal Cognitive Assessment,MoCA-J),VR-Eを行った.HC,MCI,ADの3群間において一元配置分散分析を行った結果,下位項目およびVR-E得点の結果で有意差を認めたことから,VR-Eは3群に分類できると考えられる.HCとMCIにおけるAUCではVR-E得点が0.86(95%CI:0.78-0.93),MMSEが0.92(95%CI:0.87-0.97),MoCA-Jが0.92(95%CI:0.85-0.98)であった.MCIとADにおけるAUCはVR-E得点が0.87(95%CI:0.80-0.95),MMSEが0.90(95%CI:0.81-0.98),MoCA-Jが0.88(95%CI:0.81-0.95)であった.VR-E得点のAUCはMMSEやMoCA-JのAUCよりも低い結果となったが,検査時間の大幅な短縮や解答方法が視線のみといった検査の簡便さ,問診法ではないことによる対象者への心理的負担の軽減等の利点を考えると非常に良好な結果であり,VR-Eは認知機能検査として有用であると考えられる.
  • 結論:対象者が視線追跡のみで認知機能の評価が可能であり,視線追跡による認知機能検査の診断結果と臨床診断との一致率が高いことから,視線追跡による認知機能検査はMCIの早期発見が可能である.