3/24勉強会
【研究報告】
担当:大野先生
タイトル:MR画像バイオマーカーの開発と検証
- 背景・目的:神経膠腫(グリオーマ)は,神経膠細胞(グリア細胞)から発生する悪性脳腫瘍の総称である.原発性脳腫瘍の中で高頻度かつ致死的であり,複数のタイプや悪性度が存在するため診断が難しい.2016年以降,腫瘍細胞に生じる遺伝子変異に基づく分子診断が行われるようになり,2021年WHO分類ではさらに細分化された.腫瘍内多様性や可塑性により,生検による分析が困難であり,非侵襲的に腫瘍全体を評価する手法の開発が求められている.
- 方法:MEGA-PRESS,LASER-MRS法,QSM,CEST-MRI法など種々のMR撮像手法を駆使し、腫瘍の悪性度や成長特性を反映するMR画像バイオマーカーを開発する.
- 結果:CEST-MRI法により,グルタミン酸とグリシンの濃度分布を高解像度で画像化できた.
- 結論:本研究は,非侵襲的に腫瘍全体を評価することを可能にし,診断精度の向上に寄与することが期待される.グリオーマ診断における非侵襲的で高精度な術前診断法の確立や腫瘍の悪性度や成長特性の予測を支援する臨床ツールとしての利用を目指し開発を進めていく.
【文献抄読】
担当:山波さん
タイトル:Influence of an inspiratory muscle fatigue protocol on healthy youths on respiratory muscle strength, vertical jump performance and muscle oxygen saturation: a randomized controlled trial
出典:Ladriñán-Maestro et al., J Transl Med. 2024. 22. doi: 10.1186/s12967-024-05555-3B2
- 背景・目的:吸気筋の疲労は,四肢の血流と身体能力に影響を及ぼすことが報告されている.運動時に生じる血流の再分配は筋メタボリフレックスと呼ばれる.吸気運動の主動作筋である横隔膜への血流再分配量は四肢の筋よりも多いことが報告されていることから,吸気筋疲労課題は四肢筋機能を低下させると考えた.そこで本研究の目的は,健常若年者の呼吸筋の強さ,垂直跳びのパフォーマンス,筋酸素飽和度に対する吸気筋疲労課題の影響を検討することとした.
- 方法:対象は18から45歳の健常若年者24名とし,吸気筋疲労群(IMFG),吸気筋活性化群(AG),コントロール群(CG)の3群にランダムに割り当てた.垂直跳び,超音波診断装置による横隔膜機能測定,筋酸素飽和度,および最大吸気圧の測定は介入前と介入直後の2回行った.
- 結果:IMFGは,AGおよびCGと比較して垂直跳びパフォーマンス,横隔膜機能,筋酸素飽和度のスコアが有意に低かった.またAGは,IMFGおよびCGと比較して垂直跳びパフォーマンス,横隔膜機能のスコアが有意に高かった.
- 結論:吸気筋疲労課題は垂直跳びパフォーマンス,横隔膜機能,筋酸素飽和度に悪影響を及ぼし,適度な吸気筋疲労課題は垂直跳びパフォーマンスと横隔膜機能を向上させることが明らかとなった.