3/31勉強会
【研究報告】
担当:久保先生
タイトル:痛みは神経だけの問題ではない?痛みに関わる非神経細胞のお話
- 背景・目的:神経障害などにより引き起こされる疼痛には,非神経細胞が関与していることが知られている.これまでに,ミクログリア,アストロサイト,オリゴデンドロサイトなどの中枢神経系のグリア細胞については様々な研究がなされているが,末梢神経節に存在するサテライトグリアも神経障害後などの疼痛に関与することが報告されている.サテライトグリアの機能変化による神経節細胞の興奮性変化を電気生理学的に解析し,その機能連関のメカニズムをあきらかにする.
- 方法:神経節細胞とサテライトグリアの物理的・化学的構造をできるだけ維持した標本からパッチクランプ記録を行った.神経興奮により神経節細胞から放出されるATPがサテライトグリアに発現するP2X7受容体に作用する報告があることから,本研究ではP2X7受容体作動薬であるBzATPを用いて検討を行った. (Bz)ATP-P2X7受容体から始まる神経節細胞とサテライトグリア間の情報伝達の詳細をあきらかにするために,種々の阻害剤を共存させてBzATPの効果への影響を検討した.
- 結果:BzATP投与により,神経節細胞に興奮性変化(静止膜電位の上昇と基電流の低下)が引き起こされた.この変化はヘミチャネル阻害剤や代謝型グルタミン酸受容体5阻害剤の共存により阻害された.また,培養サテライトグリア細胞を用いた検討により,BzATPによりグルタミン酸が細胞外に放出されることがわかった.つまり,サテライトグリアがATP-P2X7経路により活性化されるとサテライトグリアからへミチャネルを通ってグルタミン酸が放出され,グルタミン酸は神経節細胞上のmGluR5に結合することで,神経の興奮性を上昇することが推察された.
- 今後の展望:サテライトグリア活性化によって細胞内で引き起こされるGFAPなどの発現変化のメカニズムをあきらかにする.