4/21勉強会

【研究報告】

担当:高林知也先生

タイトル:足部アライメントの違いがランニング時のアキレス腱張力に与える影響―シミュレーションを用いた研究―

  • 目的:ランニング障害の1つにアキレス腱障害があり,アキレス腱にかかる張力(ATF)の増加が発症や症状の増悪に関与する.ATFの算出には足関節モーメントとアキレス腱モーメントアーム(MA)が必要となる.扁平足やハイアーチのような足部アライメントはMAが異なると報告されているため,足部アライメントによってATFが異なる可能性がある.さらに,足関節モーメントとMAがどのような組み合わせのときに,どの足部アライメントでATFが最も高値になるかは不明である.そこで,本研究は足部アライメントの違いがランニング中のATFに与える影響を検証した.
  • 方法:本研究は足関節底屈モーメントとMAを独立変数,ATFを従属変数としたシミュレーション解析を実施した.先行研究で報告されているランニング時の足関節底屈モーメント(0 Nmから160 Nm)と足関節角度(底屈25°から背屈25°)を基に,ATFを計算するためのシミュレーション条件を規定した.先行研究の足関節のX線画像から得られたMAを基に,曲線フィッティングによる3次多項式を作成し,角度1°毎で正常足,扁平足,ハイアーチのMAを計算した.独立変数のステップサイズは1刻みとし,足関節底屈モーメントを各足部アライメントのMAで除すことでATFを算出した.
  • 結果:全ての足部アライメントで,足関節背屈角度が増加するほどMAは非線形に減少し,全角度条件でハイアーチ,正常足,扁平足の順で低値を示した.また,足関節底屈モーメントおよび足関節背屈角度    が増加するほどATFも増加した.足関節底屈モーメントが最大(160Nm)かつ足関節背屈角度が最大(25°)のとき,各足部アライメントのATFは最大値を示し,ハイアーチ(73.4N/kg),正常足(63.2N/kg),扁平足(55.7N/kg)の順で高値を示した.
  • 結論:ハイアーチはアキレス腱障害の発症と関連することが報告されており,本研究はそのメカニズムを説明するための一助になりうる.

【文献抄読】

担当:関根悠介さん

タイトル:Dual-tDCS combined with sensorimotor training promotes upper limb function in subacute stroke patients: A randomized, double-blinded, sham-controlled study

出典:Chong et al., CNS Neurosci Ther 30: e14530, 2023. doi: 10.1111/cns.14530

  • 背景・目的:両側一次体性感覚野へのデュアルtDCSと感覚運動訓練は,それぞれ脳卒中リハビリでの有効性が期待される治療法である.しかし,亜急性期脳卒中患者に対するこれら二つの併用効果は明らかではない.本研究は,亜急性期脳卒中患者を対象に,感覚運動訓練による上肢機能の改善効果をデュアルtDCSがさらに高めるかどうかを検証した.
  • 方法:片側皮質下脳卒中患者52名を,デュアルtDCS併用群と偽刺激対照群にランダムに振り分けた.両群とも40分の感覚運動訓練を受け,併用群は事前に20分間の両側一次体性感覚野へのデュアルtDCS,対照群は偽刺激を受けた.治療は4週間(1日1時間,週5日)実施した.介入前後で上肢機能(FMA-UE, ARAT, BBT),感覚(Em-NSA, CPT),ADL(BI),精神状態(HADS)を評価し,fNIRSを用いて脳活動のメカニズムも調査した.
  • 結果・結論:デュアルtDCSと感覚運動訓練の併用は,亜急性期脳卒中患者の上肢感覚・運動機能,ADL,精神状態を改善する効果が期待される.RPM-SMC-LSACがその治療標的となる可能性が示唆された.