8/25勉強会
【研究報告】
担当:島谷美海花さん
タイトル:膝前十字靭帯再建術者における筋発揮率と大腿四頭筋筋内脂肪量の関係
- 背景・目的:膝前十字靱帯(ACL)損傷はアスリートに多発し,再建術後に競技復帰を果たしても再損傷率が高い.その予防には,ACL損傷場面を反映する遠心性筋力や瞬発性筋力の評価が重要である.筋内脂肪量は動的筋機能に影響すると報告されているため,その関係を検証することで,膝関節に負担をかけない評価法として臨床で活用できると考えられる.そこで本研究は,等尺性・求心性・遠心性収縮における,瞬発的な筋力発揮能力を反映する筋発揮率(RTD)と筋内脂肪量との関係を明らかにすることを目的とした.
- 方法:ACL再建術後の成人女性10名(年齢19.9±0.6歳,術後3.8±1.3年)を対象とした.多用途筋機能評価運動装置(Biodex system3)を用いて,等尺性および角速度60deg/secでの求心性・遠心性筋力を計測し,トルク発生から50msecのRTDを算出した.超音波画像装置を用いて大腿四頭筋の筋内脂肪量を計測した.Pearsonの相関係数を用いてRTDと筋内脂肪量の相関関係を検証した(有意水準5%).
- 結果:大腿直筋の筋内脂肪量が多いほど,等尺性収縮時のRTDは有意に低下していた(r = -0.68, p = 0.03).また,内側広筋の筋内脂肪量が多いほど,遠心性収縮時のRTDは有意に低下していた(r = -0.72, p = 0.02).一方,求心性収縮では有意な相関関係は認められなかった.
- 結論:等尺性収縮および遠心性収縮において,筋内脂肪量を指標とすることでRTDの低下を評価できる可能性が示唆された.
【文献抄読】
担当:越智元太先生
タイトル:Using hair biomarkers to examine social-emotional resilience in adolescence: A feasibility study
出典:Rovnaghi et al., Compr Psychoneuroendocrinol 22: 100287, 2025. doi: 10.1016/j.cpnec.2025.100287B3
- 背景・目的:思春期前期のストレス管理と社会感情学習への介入が注目されているが,客観的な生理学的指標での効果検証は限られている.特に,呼吸法ベースの介入が慢性ストレスやソーシャルサポートに与える影響は不明な点が多い.そこで,本研究ではSKY Schools Program(呼吸法技術と社会感情学習カリキュラムの組み合わせ)の効果を,髪の毛のバイオマーカーを用いて検証した.
- 方法:7年生の生徒を対象に,3週間の毎日40分のSKY介入を実施し,ベースライン,介入直後,長期フォローアップの3時点で評価を行った.髪の毛のコルチゾール濃度(HCC:慢性ストレス指標)とオキシトシン濃度(HOC:社会的つながり指標)を測定した.
- 結果:その結果,長期フォローアップ時にメンタルヘルスの不調日数が有意に減少し,HCCは介入直後に一時的に上昇したが長期的には低下し,より適応的な範囲に移行した.また,HOCは介入後に有意に上昇した.
- 結論:これらの結果から,SKY介入は思春期の生徒のHPA軸調節を改善し,社会的つながりを強化することで,メンタルヘルスの向上に寄与する可能性が示唆された.