9/22勉強会
【研究報告】
担当:武田真桜さん
タイトル:足底への高頻度反復感覚刺激が片脚立位バランス機能の向上をもたらす刺激効果メカニズムの解明
- 背景・目的:高齢者の転倒の危険因子には片脚立位バランス機能が関与することが報告されており,加齢に伴う足底感覚機能の低下は高齢者の易転倒性を誘起することからも,足底感覚機能に着目したバランス機能を向上させる治療技術の開発は高齢者の転倒予防に貢献する可能性がある.高頻度反復感覚刺激(High frequency repetitive sensory stimulation:HF-RSS)は手指の感覚ならび運動機能を向上させる非侵襲的介入技術である.我々は足底に応用することで若年健常者の片脚立位バランス機能を向上させることを明らかとしてきたが,その刺激効果メカニズムは不明である.本研究の目的は感覚機能に関与する脳領域である一次体性感覚野(S1)の活動に着目し,刺激効果メカニズムを明らかとすることである.
- 方法:実験1では若年健常者30名,実験2では若年健常者25名を対象に,HF-RSS前後においてS1興奮性を評価した.S1興奮性評価には体性感覚誘発電位(SEP)を用いた.実験2ではS1興奮性と行動学的指標(平均動揺速度.足底触覚閾値)の関連性を明らかとするために刺激前後で重心動揺測定と感覚機能評価を実施した.
- 結果:HF-RSS介入前後においてSEP振幅値に有意な変化は認められなかった(実験1Baseline-to-peak:p = 0.147,Peak-to-peak:p = 0.332).
- 結論:足底に対するHF-RSSは一次体性感覚野の興奮性に影響を及ぼさない可能性が示唆される.
【文献抄読】
担当:太田大樹先生
タイトル:Neural basis of transcutaneous electrical nerve stimulation for neuropathic pain relief
出典:Liu et al., Neuron 113: 1–16, 2025 doi: 10.1016/j.neuron.2025.08.010B3
- 目的:経皮的電気刺激療法(TENS)による上位中枢の鎮痛機構を明らかにすること
- 結論:TENSが後根神経節のAβ低閾値機械受容器(DRG Aβ-LTMRs)を活性化し,このシグナルが薄束核(GR),視床腹側後外側核(VPL),一次体性感覚野後肢領域(S1HL)へと伝わる経路(DRG Aβ-LTMRs-GRGlu-VPLGlu-S1HL神経回路)を介して鎮痛が生じることを明らかにした.この経路は,通常,振動や触覚などの体性感覚情報を伝達するが,本研究ではこの経路がさらに古典的な下行性疼痛抑制系に投射することも確認している.また,TENSは損傷後早期から繰り返し行うことが重要であることも示されている.