9/29勉強会

【研究報告】

担当:廣瀨 貴喜さん

タイトル:クロスエデュケーションを活用したバランストレーニングの新たな可能性の検証

  • 背景・目的:クロスエデュケーション(CE)とは,一側の筋力トレーニングによって対側の筋力も増強する現象である.近年,CEは筋力のみならず運動技能にも及ぶことが示されているが,バランストレーニング(BT)に関するエビデンスは依然として不足している.本研究の目的は,健常若年者を対象に,単回のBTによってCE効果が生じるかを検証することである.
  • 方法:健常成人54名を,片脚立位トレーニング群,スラックライントレーニング群,コントロール群の3群(各18名)にランダムに割り付けた.各群において,トレーニング前,トレーニング直後,および24時間後に,トレーニング側と非トレーニング側の片脚立位バランスおよびスラックラインバランスを評価した.統計解析は,脚,時間,群を要因とする混合要因三元配置分散分析を用い,事後検定にはBonferroni法を適用した.
  • 結果:片脚立位トレーニング群およびスラックライントレーニング群では,トレーニング直後および24時間後において,トレーニング側のみならず非トレーニング側でもバランス機能の向上が認められた.
  • 結論:健常若年者において,単回のBTにおいてCE効果が生じることが明らかとなった.

【文献抄読】

担当:宮口 翔太先生

タイトル:Theta-gamma transcranial alternating current stimulation enhances ballistic motor performance in healthy young and older adults

出典:Gamage et al., Neurobiol Aging, 152: 1-12, 2025. doi: 10.1016/j.neurobiolaging

  • 目的:本研究は,θ–γ経頭蓋交流刺激(theta–gamma transcranial alternating current stimulation: tACS)が,若年者および高齢者における運動パフォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることとした.
  • 方法:本研究では,一次運動野(M1)に対してθ–γ tACSを付与し,母指外転加速度のトレーニングを実施した.被験者は若年群(18名)と高齢群(18名)に分けられ,それぞれがθ–γ tACSまたはsham刺激を受けた.
  • 結果:tACS条件ではsham条件と比較して外転加速度が有意に増大し,運動遂行能力の向上が認められた.この効果は若年者・高齢者の両群で認められたものの,若年者への効果の方が高かった.また,運動誘発電位の増大も観察され,tACSがM1の興奮性を高めた可能性が示唆された.
  • 結論:θ–γ tACSは,若年者と高齢者ともに運動パフォーマンスを向上することが明らかになった.年者において,単回のBTにおいてCE効果が生じることが明らかとなった.