【研究報告】
担当:関根 悠介さん
タイトル:低頻度末梢電気刺激が触覚機能と脳律動にもたらす効果の検証
【文献抄読】
担当:中山 憲司先生
タイトル:Variant Creutzfeldt-Jakob disease diagnosed 7.5 years after occupational exposure
出典:Brandel et al., N Engl J Med 383(1): 83-85, 2020. doi: 10.1056/NEJMc2000687
本論文抄読では,上記の論文を中心に,「プリオン病」に関する解説を行いながら,最新の知見や研究動向について紹介した.
2011年に発表されたPadilla らの論文(PLoS Pathog. 2011; 7:e1001319)に従事したフランスの研究者が実験中に受傷し,プリオン病に職業性曝露した.ガイドラインに基づく感染予防処置が行われたが,7年半後に神経症状が出現し,17か月の経過で死亡した.臨床検査および病理診断の結果,変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(Variant Creutzfeldt-Jakob disease: vCJD)と診断された.
当該患者が従事していたPadilla らの研究では,牛海綿状脳症(狂牛病,Bovine Spongiform Encephalopathy : BSE)から採取された異常型プリオン・タンパク質(PrPSc-BSE)を羊に感染させて継代し,ヒト正常型プリオン・タンパク質(PrPc)を発現するトランスジェニックマウスへの伝達性を検討した.その結果,ヒト・プリオン遺伝子(PRNP)のコドン129がメチオニン・ホモ接合(MM型) のマウスでは高い感染効率を示し,vCJDと類似した病態の再現に成功した.
上記の職業性曝露症例は,強感染性の羊継代BSE(PrPTSE)を取り扱う実験の過程で,不幸にもPRNPコドン129MM型を有するヒトへの感染が生じた可能性があることを示唆しており,バイオセイフティの観点からも極めて重要な警鐘となっている.