12/8勉強会
【研究報告】
担当:清水 俊之介さん
タイトル:音声再生速度の違いが引き起こす脳活動パターンの解析:時空間深層学習による新たな知見
- 背景・目的:従来の統計的集団解析(SPM)では,音声のような経時変化する刺激による微細な脳活動の変化を捉えきれない可能性がある.一方,fMRIデータと深層学習を組み合わせた研究が進んでいるが,4次元データを扱うモデルの可視化に関する報告は少ない.本研究では,「星の王子さま」の読み上げ音声を用い,再生速度(速い・遅い)の違いが引き起こす脳活動の差異を,時空間深層学習モデルを用いて明らかにするとともに,XAI(Grad-CAM)を用いてモデルが着目した部位を可視化することを目的とした.
- 方法: 対象は健常大学生33名とし,第一言語を日本語とする右利きとした.刺激課題として「星の王子さま」の音声を1.5倍速(FAST条件)と0.75倍速(SLOW条件)で聴取させ,fMRI計測を行った.計測データを基にBOLD信号の隣接差分を入力とする深層学習モデル(3D CNN + LSTM + Attention等)を作成し,速度条件の分類精度を検証した.さらにGrad-CAMを用い,モデルが分類において重要視した脳部位を特定した.
- 結果:SPMによる集団解析では,両条件ともに聴覚野(横側頭回)の賦活がみられたが,条件間に有意差は認められなかった.一方,時系列情報を考慮した深層学習モデル(3D CNN + LSTM + Attention)は94.90%の高い正解率で条件を分類した.時系列情報を平均化した3Dモデルの精度は63.27%にとどまった.Grad-CAMによる解析では,紡錘状回,楔前部,下側頭回など,SPMで有意とされた聴覚野以外の部位が高い重要度を示した.
- 結論:統計的手法では有意差が見られないデータであっても,時空間情報を扱う深層学習モデルを用いることで高い精度で分類可能であることが証明された.また,深層学習モデルは従来の解析で支配的となる領域以外の微細な違いを捉えている可能性が示唆され,脳機能解明における新たなアプローチとしての有用性が示された.
【文献抄読】
担当:吉野 琢朗さん
タイトル:Flow-mediated dilation decreases in women, but not men, following mild acute intermittent hypoxia
出典:Sara et al. J Appl Physiol 138(1):99-106, 2025. doi:10.1152/japplphysiol.00513.2024B3
- 目的:急性かつ間欠的な軽度低酸素への曝露は,交感神経系の活動を高め,動脈のせん断速度(SR)を低下させ,若年男性の血圧(BP)を上昇させることが知られている.間欠的低酸素(IH)による血圧上昇効果は若年女性ではあまり顕著でないことから,本研究では,IH後の大血管および微小血管機能に対する性差の影響を検討した.
- 方法:18人の若年成人(女性8名,平均年齢23±5歳)を対象に,IH前後で血圧,大血管機能[上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(FMD)],微小血管機能[反応性充血の曲線下面積(RHAUC)],およびSRAUCを測定した.
- 結果:IH中の平均最低血中酸素飽和度は,ベースラインと比較して有意に低下した.男性では,IH後に上腕動脈収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)が上昇した.一方,女性ではSBP,DBPに有意な変化は見られなかった.男性ではIH後もFMDが維持されたのに対し,女性では有意な低下が認められた.RHAUCおよびSRAUCは,性別に関係なくIH後に低下した.
- 結論:急性軽度IHは健康な男性ではBPを上昇させるが,女性ではそのような変化は見られなかった.女性では,IH後に微小血管機能および大血管機能の両方が低下したのに対し,男性では微小血管機能のみが低下した.IHが血圧および大血管機能に及ぼす性差は,IHの潜在的なホルミシス効果を考える上で重要な意味を持つ可能性がある.