12/15勉強会
【研究報告】
担当:石垣 智恒先生
タイトル:活動的および非活動的なアキレス腱患者における腱構造と主観的症状・stretch-shortening cycle運動能力との関連性の探索
- 背景・目的:アキレス腱症患者では,腱の粘性低下や肥厚(腱厚および横断面積の増加)といった腱構造の変化に加えて,朝方のこわばりやstretch-shortening cycle(SSC)運動能力の低下が認められる.腱症患者の病態理解を深めるために,本研究では活動性の異なるアキレス腱症患者において,腱構造,朝方のこわばり,およびSSC運動能力の関連性を明らかにすることを目的とした.
- 方法:片側アキレス腱実質部症患者181名(高活動群:82名,低活動群:99名)を対象とした.腱構造の評価として,超音波画像装置を用いてアキレス腱の厚さ,横断面積,弾性率,および粘性を計測した.SSC運動能力は,片脚ホップ高,drop countermovement jump(DCMJ)高,countermovement jump(CMJ)高,およびDCMJ高/CMJ高によって評価した.全評価項目の患健差の値も統計に使用した.統計解析には,腱構造を独立変数とし,朝方のこわばりまたはSSC運動能力を従属変数としたステップワイズ線形回帰分析を用いた.腱構造とSSC運動能力の関連性を検討する際は,年齢と体重を強制投入した.
- 結果:健側よりも患側の腱がより厚い高活動群では朝方のこわばりが軽度であった.低活動群では,患側の弾性率が高く,患側の粘性が高いと朝方のこわばりが強かった.高活動群では腱構造とSSC運動能力との間に関連性を認めなかったが,低活動群では,患側の腱厚が増加しているとDCMJ高の患健差が大きく,CMJ高の患健差も大きかった.
- 結論:アキレス腱症患者において,腱構造変化と症状・SSC運動能力との関連性は,患者の活動性に影響を受けることが示された.また,有意であっても強い関連性を示さなかったことから,アキレス腱症は多因子性であることが示唆される.
【文献抄読】
担当:笠井 紅里さん
タイトル:Serum BDNF and progression to MCI in cognitively normal older adults: A prospective cohort study
出典:Kim K et al. J Prev Alzheimers Dis 12(7): 100210, 2025. doi: 10.1016/j.tjpad.2025.100210B3
- 目的:脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor: BDNF)は,ニューロンの保護や神経発生,発達をサポートする働きがある.ヒトを対象とした研究では,血中BDNFレベルが高いほど,アルツハイマー型認知症の認知機能低下が遅くなり,認知症への転換リスクが低下すると報告されている.しかし,認知正常の個人では血中BDNFレベルが認知症の前段階である軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)への進行リスクと関連しているかは不明である.そこで本研究では,認知正常高齢者の血清BDNFレベルが,4年間の追跡期間でMCIの進行に与える影響を調査することを目的とした.
- 方法:2014年に開始された進行中の前向きコホート研究であるアルツハイマー病の早期診断と予測のための韓国脳老化研究(Korean Brain Aging Study for Early Diagnosis and Prediction of Alzheimer’s Disease: KBASE)に参加した274名の認知正常高齢者が含まれた.参加者は1)参加者または情報提供者による認知的苦情,2)客観的な認知障害,3)機能活動における自立性,4)認知症の欠如および臨床認知症評価スコア0.5を満たしている場合MCIへの進行が定義された.年齢,性別,教育,APOE4,アミロイドPET陽性,複合血管リスク因子スコア,総ホモシステイン,総コレステロール,HDLコレステロール,LDLコレステロール,トリグリセリド,BMI,喫煙状況,飲酒状況,外傷性脳損傷の既往,BDNF Val66Met 多型,うつ病自己評価尺度,Mini-Mental State Examinationが評価および測定された.
- 結果:274名の参加者のうち,26名がフォローアップ中にMCIを発症した.高血清BDNF群は,低血清BDNF群と比較して,MCI発生率が有意に低下した.
- 結論:BDNFは,認知正常高齢者のMCIへの進行に対して保護的に働くことが示唆された.この保護的効果は特に,女性,若年者,低い教育水準,アミロイドPET陰性の個人でより顕著に現れた.