12/22勉強会

【研究報告】

担当:井上 創太さん

タイトル:小脳への経頭蓋直流電流刺激(tDCS)による熱痛覚閾値の変化

  • 背景・目的:痛み知覚は,単に刺激の強度によってのみ決まるものではなく,記憶・情動・認知など様々な要因によって大きく変化する.そのため,痛み知覚には,様々な脳領域が関与することが知られている.そのような中で,近年の研究から,これまで「運動を調節する脳領域」と考えられてきた小脳が「痛み知覚」にも重要な役割をはたしていることが示唆され始めた.しかしながら,小脳の活動を直接変えることで,痛み知覚を変化できるかについては不明である.本研究では,非侵襲的脳刺激法である経頭蓋直流電流刺激(tDCS)を用いて小脳の活動を調節し,痛み知覚がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした.
  • 方法:本研究では健常成人39を対象に,小脳へのtDCS(陽極・陰極・偽刺激)各群13名ずつに対して小脳へのtDCSを実施した.痛み知覚の評価には,熱痛覚刺激を用い,痛みを感じ始める熱痛覚閾値の評価を左右の前腕で行った.これらの測定をtDCS前,中,後で実施し,脳刺激によって痛み知覚がどのように変化するかを調べた.
  • 結果:右小脳へのtDCS(陰極刺激)がtDCS介入後の左手の熱痛覚閾値を上昇させた.その一方で,右手にはこのような変化は認められなかった.
  • 結論:小脳へのtDCS(陰極刺激)刺激対側の熱痛覚閾値を上昇させ,痛み知覚を減弱させる可能性がある.

【文献抄読】

担当:古澤 芽依さん

タイトル:Is a higher body mass index associated with longer duration of survival with disability in frail than in non-frail older adults?

出典:Watanabe et al. Int J Obes 49: 348-356, 2025. doi: 10.1038/s41366-024-01681-6

  • 目的:フレイルは複数の生理機能の低下を特徴とする老年症候群であり,死亡と密接に関連することが知られている.Body mass index(BMI)はやせや肥満を評価する簡便な指標であるが,分布や健康リスクとの関連は人種・地域によって異なることが報告されている.そのため,非アジア人を対象とした先行研究の知見を日本人高齢者に直接適用することは慎重な解釈が必要である.さらに,高齢者におけるBMIと障害リスクとの関連については一貫した見解が得られておらず,フレイルの有無によってBMIと全生存年齢・障害発生年齢,障害の無い生存年齢との関連がどのように異なるかは十分に検討されていない.本研究の目的は,高齢者を対象にBMIと障害リスクとの用量反応関係を明らかにするとともに,フレイルの有無別にBMIと全生存年齢,障害発生年齢,障害の無い生存年齢との関連を検討することとした.
  • 方法:京都府亀岡市に在住する65歳以上の地域在住高齢者10,232名(女性5,459名,男性4,773名)を解析対象とした前向きコホート研究(Kyoto–Kameoka study)である.BMIは自己申告による身長および体重から算出し,18.5,18.5–21.4,21.5–24.9,25.0–27.4,≧27.5 kg/m²の5群に分類した.フレイルは,基本チェックリストを用いて評価し,≧7点をフレイルと定義した.障害発生は,介護保険制度の認定情報を用い,≧要支援1を障害発生と定義した.死亡情報は住民基本台帳により把握し,2011年7月から2016年11月まで追跡した.
  • 結果:高BMIおよび低BMIはいずれも障害と関連していた.BMI ≥ 27.5 kg/m²の高齢者は,障害を伴う生存期間が長かった一方,BMI < 18.5 kg/m²の高齢者は,障害発生前に死亡する可能性が高かった.また,フレイルを有し,BMIが高い高齢者は,フレイルのない高齢者と比較して,障害を伴う生存期間が長かった.
  • 結論:高齢者においては,BMIが高いほど障害を伴う生存期間が長く,特にフレイルを有する者でその関連が顕著であった.一方,フレイルを有する者はBMIにかかわらず,フレイルの無い高齢者と比較して障害のない生存期間が短かった.これらの結果から,BMIよりもフレイルの有無が高齢期の健康予後に与える影響は大きく,フレイルの改善を優先的に図る必要性が示唆された.