3/16勉強会

【研究報告】

担当:藤本 知臣先生

タイトル:ヒトの寒冷暴露時の皮膚血管収縮反応におけるイオンチャンネルの役割-カルシウム依存性塩素チャネルTMEM16A (ANO1)-

  • 背景・目的:寒冷環境下では,体温調節反応である皮膚血管収縮が体温低下抑制に寄与している.近年,皮膚血管収縮に温度感受性イオンチャネルであるTRPチャネルの働きが寄与している可能性が報告されているが,塩素イオンチャネルTMEM16A (ANO1) の役割については明らかではない.本研究では,ヒトの寒冷暴露時の血管収縮反応におけるANO1の役割を検討した.
  • 方法:健康な成人7名 (男性4名,女性3名) を対象とした.皮内マイクロダイアリシス法を用いて前腕部に①リンガー液 (Control) もしくは②2.0 mMベンズブロマロン溶液 (ANO1阻害薬) を還流させた.その後,1) マイクロダイアリシス処置部位に対する局所冷却 (20℃と10℃を20分ずつ),2) 反対側の腕における寒冷昇圧試験 (4℃の冷水に手首まで),および3) 反対側の腕における静脈阻血を行い,皮膚血管反応 (皮膚血管コンダクタンスの変化) を測定した.
  • 結果:いずれの刺激時にもベースラインと比較して皮膚血管コンダクタンスは低下した.寒冷昇圧試験および静脈阻血に対する皮膚血管収縮反応は,部位間で差は見られなかった.20℃での局所冷却時には,ANO1阻害部位で皮膚血管コンダクタンスの低下が小さくなったが,10℃の局所冷却時には部位差は見られなかった.
  • 結論:ヒト皮膚に存在するANO1は,局所冷却時の皮膚血管収縮反応に特異的に作用している可能性がある.

【文献抄読】

担当:中山 侑也さん

タイトル:Region-specific textured insoles enhance static stability in young adults with chronic ankle instability

出典:Tang et al., J Biomech 192:112974, 2025. doi: 10.1016/j.jbiomech.2025.112974

  • 目的:慢性足関節不安定症(CAI)は感覚運動障害により姿勢制御を低下させる事が報告されているが、足底の部位特異的刺激(前足部・中足部・後足部)によるテクスチャードインソール(TI)の有効性は十分に検討されていない.本研究は、足底領域を標的化したTIがCAI若年成人の静的・動的安定性に及ぼす影響を比較した.
  • 方法:CAIを有する若年成人24名(平均22.3±2.5歳)を対象に、無作為化クロスオーバーで4条件(前足部TI〔FTI〕・中足部TI〔MTI〕・後足部TI〔RTI〕・平滑対照)を同一日に実施し、片脚静止立位(COP速度・楕円面積)、Yバランステスト、ジャンプ着地(DPSI/各方向指数)および主観(安定・快適VAS)を評価した.
  • 結果:FTIは対照と比べ静的指標を有意に改善し、COP総速度を8.9%低下(p=0.024)、COP楕円面積を15.6%低下(p=0.012)させた.一方でジャンプ着地の動的安定性指標やYBT複合スコアでは有意な改善は認められず、主観評価も条件間差を示さなかった.
  • 結論:足底刺激の効果は急性かつ課題依存的であり、CAIでは前足部TIが静的安定性を改善する可能性が示されたが、動的課題には単独介入では不十分である可能性が高い.観察された前足部優位はCAI特異的機序というより一般的な皮膚感覚促通の可能性があり、臨床的意義や長期効果、補完トレーニングとの併用を今後検証する必要がある.