3/23勉強会

【研究報告】

担当:長坂 和明先生

タイトル:視床出血後の皮質におけるダイナミックな神経可塑性

  • 背景・目的:視床における脳卒中は脳卒中後疼痛と呼ばれる病的な疼痛症状を引き起こす.この病態は神経の損傷後に生じる不適切な可塑性によって生じるとされているが,その実態は明らかになっていない.とくに,皮質における活動・構造の変化は未解明である.
  • 方法:ラット視床の出血損傷による脳卒中後疼痛モデルを作製し,当該モデルを対象とした内因性イメージング,薬理学的活動操作,MRIによるトラクトグラフィーおよび解剖学的トレーサーを行うことで,活動と構造の可塑性の実態を調べた.
  • 結果:内因性イメージングでは二次運動皮質と呼ばれる領域の異常な活性化を示した.さらにこの領域を薬理学的に抑制すると動物の疼痛行動が減弱した.MRIと解剖学的トレーサーの検証によって,二次運動皮質に対する入力は視床の腹内側核→一次運動野→二次運動皮質という経路を介していることが示唆された.
  • 考察:視床の腹内側核→一次運動野→二次運動皮質の経路は通常の成体においては機能していない.したがって損傷後に新たに形成される経路であると推察できる.この新規な解剖学的経路の形成を抑制することが,病態治療法の確立に寄与すると考えられる.

【文献抄読】

担当:久保 幸大さん

タイトル:Ultrasound elastography to guide compression therapy for gastrocnemius trigger points in runners

出典:Landfald et al., Sci Rep 15(1): 41950, 2025. doi: 10.1038/s41598-025-25902-8

  • 背景:筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)はアスリートに多い筋骨格系疼痛の一つであり,主因は筋内のトリガーポイント(MTrP)である.しかし,診断は触診に依存しており客観性に乏しい.近年,エラストグラフィによる組織硬度の可視化が可能となり,僧帽筋では報告があるが,腓腹筋では十分な検討がなされていない.そのため,客観的評価および治療効果の検証が求められている.
  • 方法:アマチュアランナー44名をスクリーニングし,MTrPを有する30名(103箇所)を対象とした.MTrPは触診および超音波(B-mode,strain elastography)により同定した.虚血性圧迫(30秒×最大3回)を実施し,介入直後および24時間後に再評価した.主要アウトカムはMTrP消失(VAS≦3かつ超音波所見消失)とし,副次アウトカムとして断面積および相対硬度比を評価した.
  • 結果:触診では平均4.7個,elastographyでは平均3.4個のMTrPが検出された.分布に左右差や内外側頭差は認められなかった.MTrPは周囲組織と比較して高い硬度を示した.Active MTrPはLatent MTrPと比較してVAS,断面積,相対硬度比が有意に高かった.Latent MTrPは初回で消失しやすい傾向がみられた.虚血性圧迫により最終的に77.7%のMTrPが消失し,VASも有意に低下した.さらに,VASと断面積および相対硬度比には正の相関が認められた.
  • 結論:虚血性圧迫により多くのMTrPで疼痛の軽減および組織硬度の低下が認められた.また,elastographyはMTrPの診断補助および治療効果の客観的評価手段として有用である可能性が示唆された.