4/13勉強会

【研究報告2件】

担当:小島 翔先生

タイトル:手指を用いた両手交互運動の課題成績と灰白質容積との関連

  • 背景・目的:両手運動時の皮質活動は一次運動野のみならず,補足運動野や運動前野,小脳など広範な領域で確認されている.運動機能や感覚機能は灰白質容積と関連することが数多く報告されており,両手運動においても特定の脳領域の灰白質容積が関連する可能性がある.よって,本研究の目的は,手指による両手交互運動の課題成績と灰白質容積との関連を明らかにすることとした.
  • 方法:対象は,健常大学生61名であった.運動課題は手指のタップ課題とした.タップ課題の計測は,母指と示指に装着した磁気センサーにより二指間の距離を100 Hzで記録した.被験者には,左右交互に可能な限り素早くかつ大きく母指と示指を開閉するように指示をした.課題成績の指標は,合計タップ回数と両手運動の類似度とした. 脳画像データは,3テスラの磁気共鳴画像装置を用いて,T1強調画像を撮像した.画像解析は, SPM12を用いてVBMを行い,タップ課題時の合計タップ回数と両手運動の類似度と相関のあるボクセルを全脳レベルで探索した.
  • 結果:VBM解析の結果,手指の合計タップ回数と相関する領域は確認されなかった.一方,両手運動の類似度のスコアは,左帯状皮質運動野の灰白質容積と有意な負の相関が認められた(p = 0.001,FEW cluster-corrected).
  • 考察:本研究の結果,交互運動を逆位相で円滑に行える被験者は左帯状皮質運動野の灰白質容積が大きいことが示された.帯状皮質運動野は,順序課題に関与することや運動に伴うパフォーマンスのモニタリングに関与することが報告されている.本研究で用いたタップ課題は,左右指の運動状況を常にモニタリングしながら交互運動を継続する必要があり,そのモニタリング機能に関与している帯状皮質運動野の灰白質容積が課題成績と関連したと考えられる.

担当:菊元 孝則先生

タイトル:足関節捻挫を繰り返す慢性足関節不安定症は膝前十字靭帯損傷の危険因子となるか?

  • 目的:慢性的な足関節の不安定性を特徴とする慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability:CAI)は,膝前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)損傷の発生リスクを高める可能性が示唆されている.実際に,ACL損傷歴を有する33名の競技者のうち,52~60%が過去に足関節捻挫を経験していたとの報告があり,両者の間には疫学的な関連性が認められている.CAIでは,関節位置覚の低下や腓骨筋の反応遅延,足関節周囲筋の筋力低下,さらには姿勢制御能力の低下など,病理機械的要因に起因する運動制御障害が生じることが知られている.これらの要因により,ACL損傷が生じやすい着地動作時において,膝関節への負荷が増大し,結果としてACL損傷の発生に関与すると考えられる.そこで本研究では,ACL損傷の代表的な受傷動作である片脚着地に着目し,足関節の病理機械的障害に基づく運動制御障害が着地時の膝関節に及ぼす影響について検討することを目的とした.
  • 方法:CAIの判定には,International Ankle Consortiumの基準を用いた.さらに,超音波画像診断装置により腓骨外果および距骨を描出し,Telos stress deviceを用いて130Nのストレス負荷時と安静時の値から離開率を算出することで,足関節における病理機械的障害の有無を評価した.この際,長腓骨筋,前脛骨筋,内側腓腹筋の筋活動を無線筋電図装置(DELSYS Trigno,DELSYS社)により記録し,防御性収縮が生じていないことを確認した.続いて,三次元動作解析装置(VICON,Oxford Metrics社)および床反力計(OR6-6-2000,AMTI社)を用い,前方跳躍後の片脚着地における膝関節角度および膝関節モーメントを測定した.サンプリング周波数は,動作解析装置を250Hz,床反力計を1,000Hzに設定した.下半身に計24個の反射マーカーを貼付し,加えて大腿および下腿にはRigid Body markerを計16個配置することで,骨盤,大腿,下腿,足部の各セグメントを定義した.課題動作は前方跳躍とし,最大跳躍距離の80%地点に片脚で着地させ,5試技を実施した.そのうち,ACL損傷が発生しやすいとされる着地後100msまでの平均値を代表値として算出した.なお,初期接地(IC)は垂直床反力が10N以上となった時点と定義した.
  • 結果:腓骨外果と距骨間の離開率の有無による比較では,最大床反力値,初期接地(IC)時の足関節背屈角度および膝関節屈曲角度,さらに足関節背屈モーメントと膝関節伸展モーメントにおいて,有意な差は認められなかった.一方で,ICから100msまでの区間においては,離開率が高値を示す被験者は,低値の被験者と比較して脛骨内果の矢状面方向の移動量が大きかった.加えて,離開率が高値の被験者では,脛骨粗面の矢状面方向の移動量が低値を示した.
  • 結論:病理機械的障害を有する足関節における着地動作では,遠位下腿セグメントである脛骨内果が前方へ過度に移動する一方で,近位部である脛骨粗面の前方移動量は低値を示した.また,一部にマイナス値が認められ,これは距骨の外旋が生じている可能性を示唆する所見である.これらの結果は,下腿セグメントが地面に対してより垂直に近い状態で接地していることを意味し,結果として膝関節が浅屈曲位となる動作パターンを反映していると考えられる.このような動作は,既報においてACL損傷の危険因子とされる特徴と一致する.以上より,病理機械的障害を有する足関節では,ACL損傷につながる危険な肢位での着地が生じている可能性が高いことが示唆された.
  • 今後:下腿セグメントの三次元の動きを検証し,ACL損傷に繋がるメカニズムの検証を進めて行きたいと考えている.