5/11勉強会

【研究報告2件】

担当:坂本 航大先生

タイトル:アキレス腱付着部の滑液包の水腫が腱に及ぼす力学的影響

  • 背景・目的:後踵骨滑液包(RCB)炎はアキレス腱付着部症で高頻度に併発する疾患であるが,水腫の有無および重症度の違いが,腱付着部に与える力学的影響は十分に解明されていない.本研究の目的は,生体と同等の腱力学特性を持つThiel固定遺体を用いて実験的にRCBの水腫を再現することで,RCBの水腫の有無および重症度の違いがアキレス腱付着部に与える力学的影響を明らかにすることとした.
  • 方法:Thiel固定遺体7体10脚を対象とした.超音波ガイド下でRCB内に検体保存液を注入し,水腫を再現した.水腫の程度は,Baseline,Mild(RCB厚み,2 ± 0.5 mm),Severe(RCB厚み,4 ± 0.5 mm)の3条件とした.他動的に足関節を底屈位から背屈させ,その間のアキレス腱付着部の長軸像を超音波画像診断装置にて撮像した.アキレス腱付着部の平均曲率および厚みを計測し,条件間および角度間で比較検討した.
  • 結果:アキレス腱付着部の平均曲率は,BaselineおよびMild条件では,底屈位から背屈位への移行するに伴い平均曲率が有意に増加したが,Severe条件では足関節角度による有意差は認められなかった.底屈位において,Severe条件がBaselineおよびMild条件と比較して有意に高値を示した.アキレス腱付着部の厚みは,Severe条件のみ,底屈位と比較して最大背屈位で有意な厚みの減少が認められた.最大背屈位において,Severe条件がBaselineおよびMild条件と比較して有意に低値を示した.
  • 結語:本研究の結果から,軽度のRCB水腫はアキレス腱付着部の力学的負荷を増悪させない可能性が示唆された.一方で,重度のRCB水腫が存在する場合,底屈位からすでにRCBによる圧迫がアキレス腱に加わっており,背屈時には内圧の増加したRCBによってアキレス腱付着部への圧縮負荷が増大する可能性が示唆された.

担当:余村 花梨さん

タイトル:ソーシャル・サポート互恵性における主観的および客観的評価

  • 背景・目的:ソーシャル・サポート(Social Support: SS)の互恵性は,受領サポートと提供サポートのバランスと定義され,メンタルヘルスの維持に重要な役割を果たすと考えられている.従来のSS互恵性の評価法では,主に受領サポート得点と提供サポート得点の差分が用いられており,サポート量自体は十分に考慮されていなかった.さらに,SS互恵性を支える神経メカニズムについては,未だ十分に解明されていない.そこで本研究では,(1)SS互恵性の新たな評価法を確立すること,(2)SS互恵性の神経基盤を解明すること,を目的とした.
  • 方法:健常成人男女100名を対象とした.心理学的指標として,SESS(Scale of Expectancy for Social Support)および健康関連指標を使用した.脳画像指標として,3テスラMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置を用いてT1強調画像および安静時fMRIデータを取得した.統計解析は以下の通り実施した.(1)新たな指標の有用性を検証するため,従来指標とのベイジアンモデル比較を行った.(2)SS互恵性に関連する神経基盤を検討するため,VBM解析により灰白質体積との関連を,Seed-to-Voxel解析により安静時機能的結合との関連を調べた.
  • 結果:SS互恵性を評価する新たな指標として,IRSS(Index of Reciprocity of Social Support)を提案した.ベイジアンモデル比較の結果,IRSSは従来指標よりも高い精度で健康関連指標を予測できることが示唆された.また,IRSSと灰白質体積との間に有意な関連は認められなかった一方で,扁桃体および後帯状皮質を含む安静時機能的結合との間に有意な正の関連が認められた.
  • 結語:本研究の知見は,SS互恵性を評価する際には,SSのバランスだけでなくサポート量も考慮する重要性を示している.さらに,SS互恵性の背景には機能的な神経メカニズムが存在し,その機能的結合には至適な強度が存在する可能性が示唆された.