5/18勉強会

【研究報告2件】

担当:宮口 翔太 先生

タイトル:一次運動野への低周波経頭蓋交流刺激は運動技能の習得を向上させる

  • 背景・目的:低周波振動脳活動(< 4 Hz)は,記憶の固定化と運動パフォーマンスにおいて重要である.経頭蓋交流電流刺激(tACS)は皮質振動活動を調節し,運動学習に影響を与える可能性があるが,tACSによる低周波振動調節の効果は不明である.本研究では,一次運動野(M1)に適用した0.75 Hz tACSが視覚運動追跡課題の獲得と保持に及ぼす影響を調査した.
  • 方法:54人の右利きの健康な成人(平均年齢:21.2 ± 0.6歳)を,M1-tACS,Cz-tACS,またはshamの3つの群のいずれかに割り当てた.M1-tACS群とsham群では,電極を右M1と左眼窩上縁に配置した.Cz-tACS群では,部位特異性を評価するために,電極をCz(国際10-20システム)と左眼窩上縁に配置した.tACSは,参加者が視覚運動課題を練習している間,0.75 Hz,1.0 mAで30分間施行された.翌日に保持テストが実施された.運動学習は,学習曲線からの累乗近似指数とエラー率を用いて評価された.
  • 結果:M1-tACS群は,sham群よりも有意に低い近似指数を示し(p = 0.033),学習が促進されたことが示された.練習直後と翌日のエラー率も,M1-tACS群で有意に低かった(それぞれp = 0.039とp = 0.007).Cz-tACS群では有意差は認められなかった.
  • 結語:M1を標的とした低周波振動tACSが運動技能の獲得と保持を促進し,その効果はM1の手領域に特異的であることが示唆された.

担当:黒﨑 凜さん

タイトル:詐欺的状況判断における脳活動:fMRIを用いた加齢による脳活動変化の検討

  • 背景:近年,特殊詐欺被害は増加傾向にあり,被害者の多くを高齢者が占めている.加齢に伴い,処理速度,ワーキングメモリ,注意機能,意思決定機能などの認知機能低下が生じることが報告されており,詐欺的な情報の判断にも影響を与える可能性がある.これまで,意思決定やリスク評価に関与する脳活動についての研究は行われているが,高齢者における詐欺的情報判断時の神経基盤については十分に明らかになっていない.
  • 目的:詐欺的および非詐欺的文章を用いた課題fMRIを実施し、高齢者と若年者における詐欺判断時の脳賦活パターンを比較することで,詐欺判断に関わる神経基盤と加齢の影響を明らかにする.
  • 方法:健常高齢者45名および若年者46名を対象とし,詐欺的文章および非詐欺的文章を用いた課題fMRIを実施した.被験者は文章を黙読後,詐欺的か否かを判断した.課題はブロックデザインで実施し,SPM12を用いてクラスターレベル解析を行い,有意な脳賦活部位を特定した.
  • 結果:詐欺的文章条件では,高齢者・若年者ともに中前頭回および後頭紡錘状回の賦活を認めた.高齢者では上前頭回,若年者では前部島皮質の賦活を認めた.また,高齢者と若年者の差分解析では楔前部の賦活を認めた.非詐欺的文章条件では,若年者で中前頭回の賦活を認めた.
  • 結論:高齢者と若年者では,詐欺的情報の判断時に異なる認知処理様式が関与する可能性が示唆された.