6/1勉強会

【研究報告2件】

担当:星 春輝先生

タイトル:経頭蓋静磁場刺激が脳血流に及ぼす影響

  • 背景・目的:経頭蓋静磁場刺激(tSMS)はネオジム磁石が形成する静磁場を利用した新しい非侵襲的脳刺激法であり,磁石直下の神経活動を抑制できることが知られている.一方で,tSMSの持つ神経調節効果が刺激同側および刺激対側の皮質血行動態に及ぼす影響は明らかになっていない.そこで本研究では,近赤外線分光法(fNIRS)を用いて,tSMSが刺激同側および対側の皮質血行動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:本研究は2つの実験により構成された.各実験には健常成人20名が参加した.tSMSは右一次運動野(M1)上(実験1)または左M1上(実験2)に20分間実施した.介入条件はreal条件(tSMSを実施)およびsham条件(同外観の非磁性デバイスによる偽刺激)の2条件とした.fNIRSによる脳血流計測はtSMS前(pre),直後(post0),10分後(post10),20分後(post20)に実施した.脳血流計測中の運動課題は約3 Hzの左手指タッピング運動とした.脳血流の指標は右M1領域の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)濃度とし,安静時の値(運動開始の5秒から0.5秒前まで)を使用して標準化した.統計解析にはFriedman検定を用い,有意差を認めた場合は事後検定としてDunn検定(Bonferroni補正)による多重比較を行った.有意水準は5%とした.
  • 結果:実験1ではOxy-Hbの平均値において,real条件では時間要因に対する有意な主効果を認めた.事後検定の結果,post0の時点の値はpre,post10,post20,と比較して有意に減弱していた.一方,sham条件では時間要因に有意な変化は認めなかった.実験2では,real条件において時間要因に対する有意な主効果を認めた.事後検定の結果,post10の時点の値はpreおよびpost10と比較して有意に減弱していた.一方,sham条件では時間要因に有意な変化は認めなかった.
  • 結論・今後:M1へのtSMSは,刺激同側および刺激対側において運動に伴う酸素化ヘモグロビン濃度の上昇を抑制し,脳の微小循環動態に影響を及ぼすことが明らかになった.

担当:反町 瑠菜さん

タイトル:不整地路面に対する歩行適応の神経筋制御機能の特徴

  • 背景・目的:屋外路面などにおける不整地は転倒リスクが高い.これまで不整地では体幹加速度やその変動性,歩行パラメータの変動性が増加し,筋出力が増加することが分かっている.不整地歩行は複雑な姿勢制御が求められ,複数筋の協調的な活動の評価が必要であるが,これを評価できる筋シナジー解析では,筋の協調性について有意な変化が得られていない.また,先行研究では不整地歩行に不慣れで転倒リスクが高い初めて不整地を歩く施行を含んだ検討がされていない.そこで本研究では不整地歩行の適応過程の神経筋制御機能の特徴を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:若年健常者20名を対象(現在17名)とし,先行研究を基に作成した不整地と整地の路面2条件での10m歩行テストを各6往復ずつ実施した.路面条件は無作為の順で実施し,1往復ごとに10歩行周期を解析に使用した.腰部の3軸加速度計から,歩行周期時間とその変動係数(STV),体幹加速度の二乗平均平方根を算出した.また,右下肢8筋の表面筋電図を計測し,非負値行列因子分解により,8筋全ての筋活動パターンに対する1つの筋シナジーによる再現度であるVAF1を筋の協調性の指標として算出した.
  • 結果:すべての指標で整地条件と比較して不整地条件で有意に増加した.不整地において歩行周期時間とSTVは往復回数が増えると減少する傾向が得られた.
  • 結論:不整地歩行では神経筋制御に明確な変化が生じない状態でも歩行周期時間が減少する適応が生じる可能性がある.