6/8勉強会
【研究報告2件】
担当:髙橋 英明先生
タイトル:1型糖尿病モデルラットのヒラメ筋・足底筋における骨格筋萎縮と毛細血管・毛細リンパ管の関連
- 背景・目的:糖尿病は骨格筋の萎縮や微小循環障害を引き起こす.毛細血管の減少は報告されているが,組織間液を排出し恒常性を担う毛細リンパ管の変化はほとんど検討されていない.そこで本研究は,1型糖尿病モデルラットの遅筋(ヒラメ筋)および混合筋(足底筋)において,高血糖暴露期間が筋線維横断面積・毛細血管・毛細リンパ管に与える影響を形態学的に明らかにすることを目的とした.
- 方法:Wistar系雄性ラットにストレプトゾトシン(STZ)を投与して1型糖尿病モデルとし,溶媒投与のVehicle(VCL)群と比較した.高血糖暴露8週および16週の時点でヒラメ筋と足底筋を採取し,凍結横断切片を作製した.免疫蛍光染色によりCD31陽性の毛細血管とLYVE-1陽性の毛細リンパ管を可視化し,ImageJを用いて筋線維1本あたりの毛細血管数(C/F Ratio)および毛細リンパ管数(L/F Ratio)と平均筋線維横断面積を算出した.各群n=7とし,群間比較はKruskal-Wallis検定およびSteel-Dwass法を,相関の評価にはSpearmanの順位相関係数を用いた.
- 結果:ヒラメ筋・足底筋ともに,STZ群では8週・16週の両時点で筋重量と平均筋線維横断面積がVCL群と比べ有意に低下した(p<0.05).C/F RatioはSTZ群で両時点とも有意に低下し(p<0.05),毛細血管の減少が認められた.L/F Ratioも同様にSTZ群で有意に低下し(p<0.05),糖尿病による毛細リンパ管の減少が両筋で確認された.これらの筋萎縮・毛細血管減少・毛細リンパ管減少はいずれも高血糖8週時点で既に生じ,16週まで持続した.さらに平均筋線維横断面積はC/F Ratioおよびリンパ管のL/F Ratioと非常に強い正の相関を示した(rs≒0.84〜0.90).
- 結論:1型糖尿病モデルラットのヒラメ筋・足底筋では,筋線維の萎縮とともに毛細血管および毛細リンパ管が早期から減少し,筋萎縮と微小循環の減少が密接に連動していた.糖尿病による骨格筋の毛細リンパ管の減少を形態学的に示した点は新規知見であり,糖尿病性骨格筋では血液循環のみならずリンパ循環を含む微小循環系が広範に障害される可能性が形態学的に示唆された.
担当:太田 大樹先生
タイトル:遅発性筋痛の筋膜における網羅的遺伝子解析
- 背景・目的:筋膜は生体最大組織である骨格筋を覆う組織であり,密接に機能連関する可能性があるが,筋膜組織の分子基盤は未解明である.今回,運動後の筋膜で有意に発現増大する遺伝子およびパスウェイの検出を実施した.
- 方法:イソフルラン麻酔下の雄性ラット下肢伸筋群に伸張性収縮 (LC) を行い,LC24時間後の下腿筋膜を採取し,RNeasy® Mini Kit (Qiagen社) を用いて全RNAを精製した.網羅的遺伝子解析のため,精製した全RNAに対してRNA品質評価を行った.参照ゲノム配列をmRatBN7.2としてRNAシーケンス解析を実施し,運動側と非運動側との発現量比較においてFalse discovery rate (FDR) 値が5%未満の発現上昇遺伝子 (DEG) を抽出した.さらに,全遺伝子を対象にGene set enrichment analysis (GSEA) を用いて,Hallmarkデータベースを参照し,統計学的に濃縮されたパスウェイを抽出した.
- 結果:LC24時間後の筋膜において,発現上昇遺伝子(DEG)として12個が抽出された.特にAnkrd1およびMmp10の発現上昇が顕著であった.GSEAの結果,統計学的に濃縮されたパスウェイ (FDR < 0.05) として,Hallmarkにおいて「筋形成 (Myogenesis)」を含む複数のパスウェイが抽出された.
- まとめ:遅発性筋痛モデルラットの筋膜において,機械応答因子や細胞外マトリクスリモデリング因子が顕著に発現上昇しており,現在これらの筋膜内局在を検証中である.