6/15勉強会
【研究報告2件】
担当:平賀 大河さん
タイトル:知覚学習後における類似課題が学習効果に与える影響
- 背景・目的:知覚学習とは,知覚の識別を高める課題を繰り返し実施することで脳内に可塑的変化が生じ,知覚能力が向上することである.視覚領域において,学習直後の神経回路は安定性が低く,脆弱で不安定な状態にあることが示されており,学習直後に新しい課題を学習すると干渉が生じ,先行する学習の固定化が阻害されることが報告されている.このような不安定な状態から安定した状態に至るまでには約1時間を要するとされている.しかしながら,触覚領域における学習の固定化プロセスについては未だ検証されていない.本研究の目的は,触覚における知覚学習後の後続課題の実施タイミングが,先行学習の固定化に及ぼす影響を検討することとした.
- 方法:対象は右利き健常成人34名とした.触覚機能の評価および学習課題には,触覚方位弁別課題(Grating Orientation Task:GOT)を用いた.GOTは,左示指に押し当てられた半球型の刺激ブロックの溝の向きを回答する課題である.本研究では,学習課題として「縦と横」の弁別課題,阻害課題として「右斜めと左斜め」の弁別課題を設定した.知覚学習は,学習前に測定した弁別閾値に対応する刺激幅を用い,各課題150試行実施した.各試行後には,正誤のフィードバックを与えた.各課題の弁別閾値は学習前と24時間後に測定し,正答率50%に相当する刺激幅として算出した.実験条件は学習の固定にかかる時間を明らかにするために,条件①では学習課題終了15分後に阻害課題を実施し,条件②では学習課題終了60分後に阻害課題を実施した(各条件17名).
- 結果:二元配置分散分析の結果,条件①では主効果および交互作用が認められた(task=,time=条件×時間 : p=0.02).事後検定として各課題の前後比較を行った結果,阻害課題でのみ有意な成績向上が認められた(p = 0.004).一方,条件②では交互作用は認められず (条件×時間 : p=0.16),いずれの課題においても有意な成績向上が認められた.
- 考察・結論:Shibataら(2017)は,視覚の知覚学習から30分後に異なる視覚課題を行うと先行する学習の定着が阻害される一方,1時間のインターバルを設けることでこの干渉が消失することを報告している.このように学習直後の記憶は不安定で干渉を受けやすい.神経生理学的観点からは,学習直後は大脳皮質の興奮性が高く,神経可塑性が一過性に亢進しているため他課題の影響を受けやすいとされている.その後,時間の経過に伴い皮質の興奮性が低下していくことで記憶が固定化され,干渉への耐性が獲得されると考えられる.本研究により,触覚の知覚学習においても視覚と同様,学習直後の記憶は脆弱かつ不安定であり,他課題の干渉を受けやすいことが明らかとなった.この結果は,特定の感覚モダリティに依存しない,共通の知覚学習プロセスが存在することを示唆している.
担当:川尻 陽菜さん
タイトル:ベルト電極式骨格筋電気刺激の筋刺激様式の差異が刺激肢の骨格筋微小血管反応性に与える即時効果
- 背景・目的:私たちは,ベルト電極式骨格筋電気刺激(以下B-SES)を,体動が困難な患者様にも使用できる新たな介入方法と考え,着目してきた.B-SESによる単収縮刺激が骨格筋微小血管反応性を向上させることは明らかになっているが,その効果が筋刺激様式の差異に影響を受けるかは明らかになっていない.そのため,本研究はB-SESの筋刺激様式の差異が骨格筋微小血管反応性に与える即時効果を明らかにすることを目的とした.
- 方法:健常若年成人16名を対象に,2条件によるランダム化クロスオーバー試験を実施した.B-SESを,強縮条件(周波数20Hz,パルス幅260µs,Duty cycle3秒on,3秒 off),および単収縮条件(周波数4Hz,パルス幅260µs,Duty cycle単収縮の繰り返し)にて30分間実施した.刺激強度は両条件ともに,対象者の最大認容強度とした.近赤外分光法を用いて腓腹筋の組織酸素飽和度(StO2,%)を測定した.大腿遠位部に装着した駆血用のカフを250mmHgのカフ圧で5分間膨張させた後,急速に収縮させた.カフ収縮直後10秒間のStO2上昇勾配(%・s-1)を腓腹筋微小血管反応性の指標とし,カフ膨張直後1分間のStO2下降勾配(%・s-1)を.腓腹筋代謝率の指標とした.両項目を,介入前後で測定し,反復測定二元配置分散分析(条件×時間)で比較した.
- 結果:StO2上昇勾配に有意な交互作用は認められなかった(p=0.19).一方,StO2下降勾配には有意な交互作用が認められ(p=0.03),単収縮後は,単収縮前,および強縮後と比較して有意に上昇していた(単収縮前:-0.11±0.03 vs. 単収縮後:-0.17±0.07 %・s-1,p<0.01;単収縮後:-0.17±0.07 vs. 強縮後:-0.13±0.05 %・s-1,p=0.02).
- 結論:B-SESによる筋刺激様式の差異が,腓腹筋微小血管反応性に与える即時効果について,有意な交互作用は認められなかった.しかし,腓腹筋代謝率は,単収縮刺激で有意に増加したことから,骨格筋代謝率については筋刺激様式特異的な効果が存在する可能性が高い.