7/6勉強会
【研究報告2件】
担当:川村 瞭先生
タイトル:高齢者に対する機械的刺激時の脳賦活部位の特定
- 背景・目的:痛みの知覚は個人差が大きく臨床的に大きな課題となる.疼痛評価に用いられる患者の主観的評価は,簡便な一方で痛みの背景にある多様な病態生理学的メカニズムを区別することはできない.より客観的な疼痛評価を可能にするには,疼痛に関する脳機能メカニズムの解明が重要である.また,これまでの研究では若年者のみを対象として機械的刺激に対する脳賦活部位の違いをfMRIによって特定してきたが,高齢者は若年者と比較して触覚異能の低下や機械受容器の変化が報告されている.そこで本研究では機械的刺激に対する脳賦活の加齢による影響を検討し,高齢者特有の感覚処理メカニズムの解明を目的とした.
- 方法:本研究には35名の健康な成人が参加した.3種類の強度(60 g,100 g,180 g)の機械的刺激をfMRI撮像中に実施した.全対象者の各刺激強度に対する脳賦活部位の解析を実施した.
- 結果:60 gの刺激で中前頭回,100 gの刺激で前部島皮質,180 gの刺激で中側頭回が有意に賦活した.
- 結論:各刺激強度に対する脳賦活部位の特定より,刺激強度の変化に伴い賦活領域が変化することが確認された.特に比較的低強度の刺激では感覚刺激の認知評価に関連するような部位が賦活し,高強度になると痛みの反芻に関与するとされる部位が賦活した.
担当:田邊 かこさん
タイトル:手指の体性感覚機能を向上させる経皮的耳介迷走神経刺激の刺激パラメーターの検証
- 背景・目的:経皮的耳介迷走神経刺激(taVNS)は,脳卒中後の体性感覚障害に対する効果的な治療法となる可能性が示唆されている.しかしながら,体性感覚機能を効果的に向上させるtaVNSの刺激パラメーターは明らかにされていない.そこで,本研究では,実験①:刺激周波数,実験②:パルス幅,実験③:刺激強度に着目し,体性感覚機能を効果的に向上させるtaVNSの刺激パラメーターを明らかにすることを目的として検証を行った.
- 方法:対象は健常成人30名とした.各実験のtaVNSの刺激設定について,実験①は30 or 25 or 20 Hz,100 µs,痛み閾値-0.1mA,実験②は25 Hz,300 or 500 µs,痛み閾値-0.1mA,実験③は25 Hz,300 µs,痛み閾値-0.1 mA(高強度条件) or 感覚閾値(低強度条件)とした.刺激時間は15分間,刺激様式は連続刺激とした.体性感覚機能の評価は,二点識別覚(2PD)機能検査を用い,taVNSの刺激前(Pre),刺激終了直後(Post 0),刺激終了20分後(Post 20)に行った.
- 結果:実験①はいずれの刺激周波数条件においても,2PD閾値を変化させなかった(p>0.05).しかしながら,実験②において,300または500 µsのパルス幅に設定したtaVNSはPost 0,Post 20で2PD閾値を低下させた(p<0.05).また,実験③において,痛み閾値-0.1 mA(高強度条件)のみで2.5,3.5 mmのピン間距離において,Post 0およびPost 20で回答の精度が高くなった.
- 結論:30,25,20 Hzと100 µsのtaVNSは手指の体性感覚機能を変化させないが,パルス幅を長く設定した300および500 µsと25 HzのtaVNSは刺激後に手指の体性感覚機能を向上させた.また,痛み閾値-0.1mAの刺激条件のtaVNSは,刺激後にいくつかのピン間距離の回答の精度を高めた.