7/20勉強会

【研究報告2件】

担当:小曽根 海知先生

タイトル:関節組織に対する透明化技術の応用と三次元免疫染色プロトコルの確立に向けた予備検証

  • 背景・目的:近年組織透明化技術の発展が進み,生体における様々な組織の透明化が可能となってきた.脳組織や軟部組織の透明化は主流であり,三次元的な免疫染色法の確立と細胞アトラスの構築が進んでいる.しかし関節組織では未だ検証事例は少なく,透明化の可否や三次元免疫染色並びに三次元画像撮影の可否,さらに撮影後に病理切片の作成可否は未検証である.そこで予備検証として,①関節組織の透明化検証,②関節組織に対する血管の三次元免疫染色,③三次元撮影検証,④病理切片の作成を実施した.
  • 方法:SKGマウスに対し灌流固定を実施後,足関節を採取し,CUBIC-Lによる脱脂処理やCUBIC-Bによる脱灰処理を実施した.①透明化にはCUBIC-RとECiとBABBを利用し検証した.②血管内皮細胞のマーカーであるCD31を一次抗体とし,CUBIC-HV2を使用して三次元免疫染色を実施したのちに,凍結切片を作成し蛍光標識を確認した.③ライトシート顕微鏡を利用し撮影を実施した.④撮影後の組織を通常病理切片作成プロトコルに供し,H&E染色(一般染色)およびToluidine-Blue染色(特殊染色)を実施し,染色性と形態保持を観察した.
  • 結果:①関節の透明化においてCUBIC-Rでは白色脂肪組織の透明化は困難であることがわかり,EciやBABBなどの有機溶媒を使用することで透明化が可能となることがわかった.②CD31陽性細胞が関節内において蛍光標識されており非特異的反応は生じていなかった.③ライトシート顕微鏡を用いて撮影することで,関節組織全体におけるCD31の陽性細胞が三次元的に蛍光標識可能であった.④一般染色並びに特殊染色ともに染色性は良好であり,組織形態の保持も良好であった.
  • 結論:関節組織の透明化並びに三次元免疫染色と三次元画像撮影を遂行するためのプロトコルが確立され,さらにはその後の病理切片作成も実施可能であることがわかった.

担当:長尾 彩音さん

タイトル:脳卒中後疼痛の発症予測を目的とした脳内興奮抑制バランスの経時的変化の解明

  • 背景・目的:脳卒中後疼痛は,脳卒中後の回復過程において発症する慢性疼痛であり,生活の質の低下や抑うつを招く重要な合併症である.しかし,現在の治療法は薬物療法や神経刺激法などに限られ,その効果は限定的である.そのため,疼痛発症前の予防的介入が期待されるが,発症時期は個体差が大きく,発症を予測するバイオマーカーは確立されていない.本研究の目的は,脳卒中後疼痛モデルラットを用いて,疼痛関連脳領域における神経活動および興奮抑制(EI)バランスの経時的変化を明らかにし,疼痛発症を予測するバイオマーカーを探索することである.
  • 方法:ラットの左右一次運動野(M1),二次運動野(M2),一次体性感覚野(S1),二次体性感覚野(S2),および視床腹側後内側核・視床後核(VPM/Po)の計10領域に慢性埋め込み電極を留置した.術後にベースライン測定を行った後,視床後外側腹側核への微小出血により脳卒中後疼痛モデルを作製した.損傷翌日から疼痛発症まで,自由行動下ワイヤレス記録装置を用いて局所フィールド電位を経時的に記録するとともに,フォンフレイテストおよびアセトンテストにより疼痛行動を評価した.神経活動解析では,局所フィールド電位の非周期成分からEIバランスを推定するとともに,周波数解析およびグレンジャー因果解析などのコネクティビティ解析を実施する予定である.
  • 結果:現在,健常ラットにおいて慢性埋め込み電極による神経活動記録系を構築し,自由行動下で安定した局所フィールド電位の記録が可能であることを確認した.予備解析では,二次体性感覚野(S2)において顕著な神経活動が観察された.今後,脳卒中後疼痛モデルにおいて,疼痛発症前後のEIバランスおよび脳領域間ネットワークの経時的変化を解析する予定である.
  • 結論:本研究では,脳卒中後疼痛発症に伴う脳内EIバランスおよび神経ネットワークの経時的変化を明らかにすることで,疼痛発症を予測可能な神経活動バイオマーカーの同定を目指す.これにより,脳卒中後疼痛に対する予防的介入の実現に貢献することが期待される.