7/27勉強会

【研究報告2件】

担当:圓 純一郎先生

タイトル:感作リンパ球移入によるハンセン病性神経炎モデル

  • 目的:ハンセン病の主要な後遺症である末梢神経障害(感覚障害・運動麻痺・筋萎縮)は,急性神経炎を生じるReversal reaction(Type 1 reaction)などの宿主免疫反応が深く関与しているとされる.しかし,従来の動物モデルでは免疫性神経炎の再現や詳細な病理解析に限界があった.本研究は,らい菌(M. leprae)の存在だけでなく「宿主免疫反応」が神経障害を惹起・増幅させるという仮説のもと,感染ヌードマウスに感作リンパ球を移入してReversal reaction様の神経炎モデルを構築し,病理学的・定量的に解析することを目的とした.
  • 方法:M. lepraeを足底接種し6か月間感染を成立させたヌードマウス(BALB/c nu/nu)を用い,腹腔内に細胞を移入して4週間後に足底神経を解析した.実験群は①細胞移入なし,②ナイーブCD4⁺細胞群,③感作CD4⁺細胞群,④感作脾細胞群の4群を設定した.評価指標として,肉眼的変化(足底断面積),組織染色(HE・Fite抗酸菌染色),電子顕微鏡による微細構造観察,および画像解析による有髄線維陽性面積率(Positive area ratio %)の定量解析を行った.
  • 結果:感作CD4⁺細胞群および感作脾細胞群において,細胞移入なし群と比較して著しい足底腫脹(断面積がそれぞれ56%,88%増大)と神経束内への炎症細胞浸潤が誘導された.皮膚・神経内の抗酸菌は形態がsolid(均一)から断片化・顆粒状(granular)へと変化した.有髄線維陽性面積率は,細胞移入なし群(18.6±5.6%)やナイーブ群(20.6±5.2%)に比べ,感作CD4⁺群(17.5±4.2%),感作脾細胞群(10.7±4.2%)で有意に低下し,大きな神経束でも障害が確認された.
  • 考察:本研究により,CD4⁺細胞を中心とした宿主免疫反応が病原体除去(菌の断片化)を進める一方で,同時に組織・神経傷害を引き起こす「二面性」を持つことが実証された.感作リンパ球移入モデルはヒトのReversal reactionを模倣する有用な実験モデルであり,サンプル数の拡大などの課題はあるものの,感染制御だけでなく免疫反応の抑制や神経保護を目指した治療薬の評価系として期待される.

担当:古澤 芽依さん

タイトル:地域在住中高齢者における体格補正骨格筋量指標の妥当性検証

  • 目的:従来より骨格筋量指標はASMIが用いられてきた.昨年度発表された Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS2025)では新たにASM/BMIが筋量指標として追加され,日本人を対象としたサルコペニア肥満診断基準であるJapanese Working Group on Sarcopenic Obesity(JWGSO)でも採用されている.本研究の目的は,ASMIおよび両基準のASM/BMIと転倒との関連を明らかにすることとした.
  • 方法:対象は40歳以上の地域住民とした.転倒は過去1年間の転倒の有無で評価した.低骨格筋量はBIA法で測定したASMをBMIで補正して算出したASM/BMIを用い,AWGS2025(≧65歳:男性<0.83,女性<0.57,<65歳:男性<0.90,女性<0.63),JWGSO(男性<0.789,女性<0.512),ASMを身長の2乗で補正して算出したASMIを用い,AWGS2025(≧65歳:男性<7.0,女性<5.7,<65歳:男性<7.6,女性<5.7)のカットオフ値で判定した.男女別に目的変数を転倒,説明変数をASM/BMIおよびASMIにおける低骨格筋量,共変量を年齢,MMSE,握力としたロジスティック回帰分析を実施した.
  • 結果:解析対象は365名(平均年齢67.7±9.2歳,女性67.4%)であり,転倒発生割合は男性10.9%,女性20.3%,低骨格筋量該当者割合は,AWGS2025(ASM/BMI)基準では男性49名(41.2%),JWGSO(ASM/BMI)基準では男性26名(21.8%),AWGS2025(ASMI)基準では男性34名(13.8%)であった.男性のJWGSO(ASM/BMI)基準による低骨格筋量群は転倒の割合が6名(23.1%)であった.ロジスティック回帰分析の結果,男性のJWGSO基準による低骨格筋量のみ転倒と独立して関連した(調整後OR =3.52).女性は関連が示されなかった.
  • 結論:低骨格筋量と転倒との関連は判定基準及び性別により異なり,男性の転倒評価においてJWGSO基準が有用である可能性が示された.