8/17勉強会

【研究報告2件】

担当:小林 壮太先生

タイトル:入院患者におけるLife-Space Assessment in Institutionalized Settingsの構成概念妥当性:行動マッピング研究

  • 背景・目的:入院患者の身体活動低下は,死亡リスクや再入院リスクを高め,自宅復帰率を低下させる.そのため,身体活動を定量化し介入していくことが重要であるが,入院患者で使用可能な簡便な身体活動評価は開発されていない.本研究は,Life-space assessment in Institutionalized Settings(LSA-IS)が入院患者の活動量を反映した指標であるかを明らかにすることを目的とした.
  • 方法:研究デザインは横断研究とし,2025年1月から12月までに回復期リハビリテーション病院に入院した患者を対象とした.LSA-ISは対象者の担当理学療法士が1日の行動を基に代理回答し評価した.直接観察法は,行動マッピング法を用いて全て同一の研究者が8時から17時までの間に10分ごとに対象者を1分間観察し,身体活動および活動場所を記録した.観察したデータは,身体活動を活動(起居動作,移乗動作,立位活動,歩行等),座位,臥位の3つに,活動場所を病室内,病棟内,病棟外の3つにカテゴリー分けした.観察したデータは各カテゴリーの全観察時間に占める割合(%)として算出した.統計解析は,LSA-ISの合計得点と身体活動と活動場所の各カテゴリーとの関連についてSpearmanの順位相関係数で解析した.
  • 結果:解析対象者は119名,平均年齢(SD)が81.2(9.1)歳,女性が63.9%であった.LSA-ISは中央値で14点であった.直接観察法は合計6426回記録され,各カテゴリーの内訳(平均[SD])は,身体活動で活動時間が14.0(8.5)%,座位時間が42.1(18.3)%,臥位時間43.7(22.1)%であり,活動場所は,病室内が72.3(12.6)%,病棟内が11.1(9.9)%,病棟外が16.6(7.2)%であった.LSA-ISは身体活動の活動時間(ρ=0.676),座位時間(ρ=0.381),臥位時間(ρ=−0.586)と有意に相関した(いずれもp<0.001).さらに,LSA-ISは病室内時間(ρ=−0.487),病棟内時間(ρ=0.348),病棟外時間(ρ=0.427)と有意に相関した(いずれもp<0.001).
  • 結論:LSA-ISは入院患者の活動量を定量化する尺度であることが示唆された.

担当:大石 卓実さん

タイトル:歩行学習に言語教示が及ぼす神経生理学的機序の解明

  • 背景・目的:脳卒中患者では歩行中の麻痺肢の前方推進力が低下し,歩行速度の低下や長距離歩行の制限を引き起こす.歩行中の前方推進力を反映する指標として,近年はTrailing Limb Angle (TLA) が注目されており,TLAの増加を目的として,言語教示や視覚フィードバックを用いた歩行練習が実践されている.言語教示は臨床現場で多用されているが,歩行中の言語教示による歩行学習効果とその背景にある神経生理学的機序は十分に検討されていない.そこで,本研究では言語教示による歩行学習効果とその神経生理学的機序を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は右利き健常若年者24名を予定しており,現在,18名の計測が終了した.実験課題はトレッドミル上での6分間×5セットの歩行練習とした.対象者を言語教示単独で歩行練習を行う言語教示群と,言語教示に視覚フィードバックを併用した言語教示+視覚フィードバック群の2群に無作為に分類した.言語教示はTLAの増加を促す教示を付与し,少なくとも12秒に1回の頻度で実施した.また,言語教示は左右下肢を指定せず,セット毎に漸減させた.視覚フィードバックはビデオカメラで撮影中の対象者の矢状面上の歩行映像をトレッドミル前方に設置した視覚モニターに投影した.歩行練習前後の平地歩行におけるTLA,歩行速度,歩幅及び腓腹筋の筋活動量などを測定・解析した.さらに,歩行練習過程における神経生理学的指標として,各セットの腓腹筋間コヒーレンスのβ帯域の平均値を算出した.
  • 結果:現在の解析対象は18名であり,統計解析は未実施である.TLA,歩行速度及び歩幅は両群ともに歩行練習後に増加する傾向を示した.一方,腓腹筋の筋活動量は,両群ともに歩行練習後に増加する傾向は認められなかった.腓腹筋間コヒーレンスは,言語教示群ではセットの進行に伴って減少する傾向を示したが,言語教示+視覚フィードバック群では同様の傾向は認められなかった.
  • 今後:残り6名の計測を行い,統計解析を進める予定である.本研究によって得られる基礎的な知見により,臨床現場で多用されている言語教示による歩行学習効果の背景にある神経生理学的な機序が明らかとなり,今後,脳卒中患者の個別の病態に応じた言語教示による効果的な歩行練習方法の構築を目指す.