10/19勉強会
【研究報告2件】
担当:岩崎 有真さん
タイトル:投球動作における踏み込み脚の膝関節伸展運動と球速および肩・肘関節モーメントの関連
- 背景・目的:投球肩・肘障害は,投手において競技継続に大きな影響を及ぼす.踏み込み脚の膝関節伸展運動は,球速や上肢関節への負荷に影響するとされる.従来,踏み込み脚の膝関節伸展運動は,踏み込み脚が接地するフットコンタクト,肩関節最大外旋位,ボールリリースなどの特定の投球イベント間の屈曲角度の差で評価されてきた.しかし,フットコンタクトからボールリリース間の膝関節運動は屈曲したのち伸展運動へ移行するため,従来の評価では,伸展運動の大きさを十分に反映できていない可能性がある.この屈曲後の伸展運動と球速や上肢関節モーメント,骨盤および体幹回旋運動の関連は明らかではない.そこで本研究では,踏み込み脚の膝関節屈曲後の伸展運動と,球速および上肢関節モーメントとの関連を検証した.
- 方法:投手経験3年以上の健常男子大学生15名を対象に,三次元動作解析装置を用いて投球動作を解析した.課題動作はマウンドから約5m離れたネットに向けた最大努力投球とした.フットコンタクトからボールリリース間の踏み込み脚の膝関節屈曲角度とΔ膝関節伸展角度を解析した.Δ膝関節伸展角度は膝関節最大屈曲時とボールリリース時の角度の差として算出した.その他に球速,骨盤および体幹の最大回旋角速度,最大肩内旋モーメント,最大肘内反モーメントを解析した.統計解析は,ピアソンの相関係数またはスピアマンの順位相関係数を用いて各変数間の関係性を検証した(有意水準5%).
- 結果:Δ膝関節伸展角度はボールリリース時の膝関節屈曲角度(rho=-0.69,p=0.005)と有意な負の相関関係を認め,骨盤(rho=0.54,p=0.04)および体幹の最大回旋角速度(rho=0.59,p=0.02)と有意な正の相関関係を認めた.ボールリリース時の膝関節屈曲角度は球速と有意な負の相関関係を認めた(r=-0.56,p=0.03).一方,Δ膝関節伸展角度と球速(rho=0.47,p=0.08),最大肩内旋モーメント(rho=0.19,p=0.49)および最大肘内反モーメント(rho=0.08,p=0.79)とは有意な相関関係を認めなかった.また,踏み込み脚の膝関節運動は「伸展-屈曲-伸展」(6名),「屈曲-伸展」(8名),「伸展」(1名)の3パターンを認めた.
- 考察・結論:膝関節伸展運動が大きいほどボールリリース時の膝関節は伸展位を示し,さらにボールリリース時の膝関節伸展位は球速の増大と関連した.膝関節運動は屈曲と伸展運動が複合するため,ボールリリース時に膝関節の伸展位を獲得するためには,屈曲後に生じる伸展運動に着目することが重要であると考えられる.また,踏み込み脚は身体の並進運動から回転運動への移行に関連し,伸展運動は骨盤および体幹の回旋運動の増大と関連する可能性がある.本研究の結果は,踏み込み脚の膝関節伸展運動は,ボールリリース時の膝関節伸展位の獲得や骨盤および体幹回旋運動の増大と関連し,上肢関節負荷に大きな影響を与えることなく,間接的に球速向上に関連する可能性を示している.
担当:北村 亮輔さん
タイトル:呼吸条件と測定肢位の違いが股関節屈曲・伸展MVCに及ぼす影響について
- 背景・目的:股関節筋力評価は,アスリートの競技復帰や障害予防において重要である.バイオデックスを用いた股関節筋力評価では,立位と背臥位で筋力に差があることは報告されている.しかし,呼吸条件の違いによって股関節筋力がどのように変化するかは不明である.本研究は,呼吸条件と測定肢位の違いが股関節屈曲・伸展MVCに及ぼす影響について検証した.
- 方法:健常成人男性20人を対象に,バイオデックスを用いて立位と背臥位での股関節屈曲,伸展MVCと下肢および体幹筋の筋電図を計測する.また,呼吸条件は,最大吸気位での息止めと最大呼気位での息止めと安静での息止めの3条件とする.
- 今後:プレ実験を行いながら,方法の内容を確立し,本実験を実施する.