6/18 勉強会

研究報告

担当;田巻

研究テーマ;

疲労誘発性生理的振戦(Enhanced physiological tremor:EPT)の特徴と機能的意義

要旨;

静的筋収縮の持続により誘発される生理的振戦(EPT)の特徴について,下腿三頭筋を対象に力学的,電気生理学的,循環及び組織代謝的観点から検討した内容を報告した.一定負荷強度で足関節を一定角度に保持し続けると,下腿三頭筋の筋放電活動は漸増し,やがて律動的な群化放電を伴ったEPTが発現した.負荷強度が比較的低い場合,EPTの発現は一定期間持続した後,収束・停止し,その後も筋収縮(規定の作業)を継続することが可能であった.EPT前後で各パラーメタを比較すると,筋放電活動や末梢循環動態はEPT後に作業開始時点のレベルに戻るパラメータが多数確認された.EPTの発現,持続,停止機序については未解明である.

文献抄読

担当;小島

論文:M.Fischer et al, Short-latency sensory afferent inhibition: conditioning stimulus intensity, recording site, and effects of 1 Hz repetitive TMS. Brain Stimulation (2011)4, 202-9

要旨

  • 背景:経頭蓋磁気刺激を用いた短潜時求心性抑制(SAI)は,感覚-運動の統合を検討するために用いられるパラダイムである.条件刺激としての末梢神経への刺激は,一般的に一つの刺激強度が用いられている.
  • 目的:SAIに関して,刺激強度,記録筋の影響を検討することとした.
  • 方法:健常成人17名を対象とし,3種類の末梢神経の刺激強度(感覚閾値,運動閾値,感覚閾値と運動閾値の中間)を設定しSAIを計測した.MEPはFDIおよびAPBより導出した.またMEPの測定は,rTMS(1Hz, 1800回, 刺激強度は95%RMT)の前後でも計測した.
  • 結果:正中神経または尺骨神経刺激時のSAIでは,N20,N20+2,N20+4の刺激間隔においてFDIおよびAPBより記録したMEPが有意に減少した.また,正中神経刺激時では,N20+8,N20+16の刺激間隔においてAPBより記録したMEPは有意に増加した.これらは,刺激強度の増加に伴い増強された.rTMSはMEPを減少させたものの,SAIおよび長潜時反射には影響を及ぼさなかった.
  • 考察:SAIのMEPへの影響は刺激強度に依存し,解剖学的な神経支配では説明できない結果となった.抑制性のrTMSは運動出力を調節したものの,運動野と感覚入力の統合には効果を示さなかった.