感覚運動機能連関の神経基盤の解明

(1) 随意運動時の脳磁界反応

脳磁図を利用して,体性感覚刺激時や随意運動時の脳活動をミリ秒単位で計測・解析し,ヒトが動く際の皮質内ネットワークを解明しようとしています.具体的には簡単な運動直後に観察される運動誘発脳磁界の第一成分や第二成分がどのような感覚受容器の反応を検出しているのか,また,どのような神経経路で大脳皮質まで到達しているのかを追求しています.最近の研究成果で,運動直後の脳活動は筋紡錘の活動を反映していること,活動部位は第4野の可能性が高いことがわかってきました.
(Onishi et al, Brain Research 2006), (Onishi et al, Clinical Neurophysiology 2011)

左図:赤=右示指伸展運動直前の脳活動部位,黄=運動直後の脳活動部位,緑=正中神経刺激直後の脳活動部位(3b)
右図:右示指伸展運動直後の脳活動(Minimum-Norm)

(2)触覚刺激時の脳磁界反応

運動と感覚の機能連関を明らかにするために,簡単な触覚刺激時の脳活動について調査してみました.点字に類似した軽微な触覚刺激を与えた際,刺激から60ms後と130ms後に刺激と反対側半球の一次体性感覚野(3b)で著名な脳活動が認められることが明らかとなりました.また,170ms後に刺激と同側半球の二次体性感覚野でも著名な脳活動が検出されました.これらの反応は刺激を与えた際にも,刺激を解除した際にも同様に認められました(Onishi et al, Clinical Neurophysiology 2010).

触覚刺激時における左半球の脳磁場変動(刺激後32ms~182ms)

(3) 運動連合野への経頭蓋直流電流刺激(tDCS)による一次感覚運動野の興奮性の可塑的変化
(科学研究費補助金 基盤研究(c) 研究課題番号19500456)

 tDCSでは,一次運動野(M1)上に陽極電極を置いた場合(陰極は対側前額部に設置),皮質の興奮性を促進し運動誘発電位(MEP)の振幅が増大する.一方,M1上に陰極電極を置いた陰極tDCSでは反対の効果が得られる(Nitsche and Paulus, 2000).
 本研究では,左側運動連合野に対する陽極,陰極,シャムのtDCS (1mA)を,2つの大きさの電極(9 cm2または18 cm2) を用いて15分間行った.tDCSを行う前,終了直後,終了15分後にMEPとSEPを記録した.大型電極による陽極tDCS後にMEP振幅は有意に減少した.一方,SEPの早期成分(N20とP25)の振幅は増大した.陰極tDCS後には反対の刺激効果が認められた.しかし,小型電極によるMEPとSEPの振幅の変化は極性に関わらず認められなかった.小型電極が主に背側運動前野(PMd)を覆っていたのに対し,大型電極は,これに加えて補足運動野(SMA)も含んでいた(図1).
 この結果から,PMdとSMAに対する陽極tDCSは,これらの部位からM1に対する抑制性入力とS1に対する興奮性入力を増強し,また,陰極tDCSでは反対の効果を生じることが示唆された.大型電極の使用時のみM1及びS1の変化が認められたことから,tDCSでPMdとSMAを同時に刺激することが,感覚運動領域の可塑性変化を生じるために重要と考えられた(Kirimoto et al, Clinical Neurophysioligy 2011).

図1.大型,小型電極のエッジj及びFDIのHot-spotの頭皮上における3次元座標とMRI画像による脳表位置の重畳図