発声発語障害の重症度を非侵襲的に判定する方法 - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2021.10.25

研究者 田村 俊暁

発声発語障害の重症度を非侵襲的に判定する方法

近年、科学技術の発展に伴い、音響分析※は以前に比べて導入にかかるコストが激減しています。この音響分析で、神経や筋の病気や損傷に伴って起きる発声発語障害のある方の発話状態、特に「母音」部分に焦点を当てて調べました。すると、ベテランの言語聴覚士が評価した聴覚的印象の重症度と類似した音響学的測定結果が得られることがわかりました。これは本学の言語聴覚学科 田村俊暁助教、佐藤克郎教授、吉岡豊准教授が主導で実施された他大学・研究所の研究者との共同研究の成果となります。

この成果は、日本音声言語医学会が発行している査読付き学術雑誌「音声言語医学」に掲載されました!

※音響分析:声を物理現象として分析する方法

研究者からのコメント

この研究は、まだデータの数も少なく、分析する音声の録音の仕方など定番がない状態で、実際のリハビリテーションへの応用までには課題がたくさんあります。ただし、今回得られた成果によって聴覚印象による評価で臨床家ごとに差が出てしまうことを軽減できる可能性を見出しました。

今後は分析する課題や測定方法の精度を上げて実際の現場に落とし込めることを目指しています。

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本研究のポイント

1.音響分析によって神経筋の障害に起因する発声発語障害のある方の重症度を判定できたこと

2.この分析方法で様々な疾患を持つ方たちを対象にした研究としては日本初の報告

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音響学的な測定値と発話障害の重症度との散布図

フォルマント(共鳴周波数)の移動速度が遅くなると聴覚的な重症度評定も重度になっています。

原著論文情報

田村俊暁,苅安誠,吉岡豊,富澤晃文,佐藤克郎:Dysarthriaを有する日本語話者の文章音読での連母音における第2フォルマント移動.音声言語医学 62(3), 205-214, 2021

英文タイトル:Measures of Second-Formant (F2) Movements for Oral Reading Task in Japanese-Speaking Dysarthric Speakers

>>言語聴覚学科の詳細はこちら
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/medical/st/

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https://nuhw-st.info/

【研究者情報】
リハビリテーション学部 言語聴覚学科
助教 田村 俊暁(たむら としあき)

神経難病(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など)の話すことや飲み込むことの障害を中心に、そのメカニズムやリハビリテーションについて研究しています。また、発声発語器官の運動機能に着目して健常者を対象とした基礎研究も行っています。