自分の体の認識をバーチャルリアリティーで変える - 医療を変える、理工学の学び

2019.08.19

自分の体の認識をバーチャルリアリティーで変える

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原因がはっきりしないにも関わらず、体に長引く強い痛みを抱える方々がいます。このような方々の中に、自分の体を実際の見た目とは全く違って認識する「自己身体認知異常」を有している人がいます。例えば、痛い手が無くなっているように感じたり、実際よりとても大きく感じたりすることが報告されています。

―「自己身体認知異常」の症状に対して、具体的な治療方法はまだ確立されていないのでしょうか?

大鶴先生:縮小鏡や拡大鏡を使って一時的には認知を変えられることが報告されていますが、持続効果のある方法はまだ分かっていません。よって、治療方法もまだ確立されておりません。

バーチャルとの融合により見えてくる新しいリハビリテーションのカタチ

T5D_2214.JPG現在この自己身体認知に関する異常を是正することが新しいリハビリテーション手段になるのではないかと考えられています。

そのためには、自己身体を簡単に変えられて、かつ本人にとってそれが自分の体だと認識させる方法が必要となります。それを実現するために、現在バーチャル空間上で自己身体を操作すると痛みの感じ方がどのように変化するかを調べています。

<研究方法>
被験者にはヘッドマウントディスプレイを通して、バーチャル空間の手が同期してストロークされている動画を提示します。バーチャル空間に実際の75%に縮小もしくは125に拡大した手を提示し、自己身体認知が変容可能であるかを検証しています。また身体認知変容に伴い、痛覚知覚が変化するかに関しても検討を行っています。

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この研究により、自己身体認知を変えられることが分かれば、前述の痛みを抱える患者さんや、その他同様に自己身体認知異常が生じるとされている拒食症患者さんなどに対する新たな介入方法になるかもしれません。



MK3_9061 (2)_0729100757.png【研究者紹介】
新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 
准教授 大鶴 直史
痛みに関連する脳活動を調べることによって、痛みがどのように生み出されるか、またどのようにすれば痛みを抑えられるかに関する研究をしています。

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