高林知也助教の研究論文が国際誌「Human Movement Science」に採択

2019年3月29日 11:30 更新

バイオメカニクスチーム

taka.jpg高林知也助教(理学療法学科、バイオメカニクスLab、運動機能医科学研究所所属)の研究論文が国際誌『Human Movement Science』に受理されました!
高林先生はこれまでバイオメカニクスアプローチにより足部障害について研究を行っております。今回は、足部の協調性について男女差について検討した研究です。研究の詳細は以下をご覧ください。

ランニング中の後足部と下腿間の協調運動の変動性には性差は認められない!-Dynamic system approachとStatistical Parametric Mappingを用いた研究

研究内容の概要:
近年、年齢問わず健康増進の目的でランニング人口が増えており、特に女性ランナーが劇的に増えています。その一方で、ランニングによるオーバーユース障害の発生率も増加の一途をたどっており、膝関節障害は女性が男性と比較して2-3倍発生しやすいというデータが報告されています(Boling, 2010, Scand J Med Sci Sports)。しかし、未だにそのメカニズムについては不明な部分が多く、そのため予防法の確立にも至っていません。
近年では、dynamic system approachという手法を用いてセグメント間の協調運動の変動性(coordination variability)を定量化する試みが行われおり(Takabayashi et al, 2016, Sport Biomech; Takabayashi et al, 2018, J Foot Ankle Res)、coordination variabilityの増加が障害発生に関与することが報告されています。本研究ではこのcoordination variabilityに対して確率場理論を利用したStatistical Parametric Mapping(SPM)を適用させ、後足部と下腿間のcoordination variabilityの性差を検証しました。その結果、後足部・下腿間のcoordination variabilityに性差は認められないことを明らかにしました。

高林先生からのコメント:
近年女性アスリートがめざましい活躍をしており、オリンピックイヤーも近いなか女性におけるオーバーユース障害の発生メカニズムを解明することは社会的に非常に意義が高いと考えています。
本研究では、元々脳機能を解析するために発展したSPMと呼ばれる統計手法に着目しました。この手法は確率場理論をベースにしてt値を計算・補正し,Type Ⅰ errorを減らすことのできる手法となります。本研究は、この手法をdynamic system approachで求めたcoordination variabilityに対して適用させた初めての研究となります。
本研究結果より、後足部と下腿間のcoordination variabilityに性差は認められないことを明らかにしました。これまでcoordination variabilityは障害発生に関連することが報告されていましたが、膝関節障害の発生要因にはcoordination variabilityは関連しない可能性を示しました。本研究は膝関節障害の発生メカニズムの解明の一助となる研究であり、障害予防や治療展開への基礎データになると考えています。

本研究成果のポイント:
① Dynamical system approachを用いてcoordination variabilityを明らかにした点
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/190327-4.pdf (30.0KB)
② SPMを用いてcoordination variabilityに性差は認められないことを明らかにした点
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/190327-5.pdf (28.7KB)
SPMはsuprathreshold(赤線)と呼ばれる上・下限を超えると有意差があることになる.

原著論文情報
Takabayashi T, Edama M, Inai T, Kubo M. Gender differences in coordination variability between shank and rearfoot during running. Human Movement Science. 2019.

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