横田裕丈助教の研究論文が国際誌「Brain Sciences」に採択

2022年9月21日 14:04 更新

神経生理・運動生理研究チーム

横田 裕丈助教(理学療法学科,スポーツ医科学Lab,運動機能医科学研究所)が迷走神経求心線維に対する電気刺激が自律神経活動に及ぼす影響は刺激周波数,電流強度,性差により異なることを明らかにしました!!

研究内容の概要

経皮的迷走神経刺激(tVNS)は,胸腔・腹腔内の臓器からの感覚情報を迷走神経の求心線維を電気刺激することで,脳活動や自律神経活動を非侵襲的に変調させることができる新たな手法です.欧米では,てんかん発作,うつ,片頭痛等の治療を目的に臨床応用されており,近年非常に高い注目を集めています.しかしながら,刺激様式の違いなどにより効果が異なり,治療反応性は限定的であるといった問題があります.そこで本研究では,tVNSの刺激周波数,電流強度,性差が自律神経活動に及ぼす周波数特異的効果を比較検討しました.その結果,刺激周波数100 Hz,刺激電流強度3.0 mA, 250 µsの矩形波を用いた際,tVNSにより効果的に心拍数の減少が認められることが明らかとなりました.また,安静時の交感神経活動が高い被験者ほど刺激中に副交感神経活動が高まることが明らかとなり,刺激強度に対する自立神経活動の変調に性差が存在することが示唆されました. 
 本研究成果は,国際誌『Brain Sciences』に掲載されました.

研究者からのコメント


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本研究により,tVNSの刺激様式の違いが自律神経活動に及ぼす影響が明らかになり,被験者に応じた最適な刺激方法が存在することが示唆されました.近年,tVNSによる心機能,脳機能,免疫機能,感覚・運動機能の変化など様々な効果が報告されています.本研究結果を元に,tVNSが疼痛抑制に及ぼす影響も明らかにしており,理学療法を実践する上でも自律神経活動に焦点を当てたアプローチの重要性が示唆されました.

本研究成果のポイント

① 健常成人20名を対象に,前後半5blockずつ計10 blockに対して100 Hz, 25 Hz, 10 Hz, 1 Hz, 0 Hz(コントロール)の5種類刺激周波数のtVNSによる自律神経活動の変化を測定しました(実験1:下図).電流強度についても同様に,3.0 mA, 1.0 mA, 0.2 mA, 0 mAコントロール)の4条件において検討を行いました(実験2:図省略).
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実験1,および2の結果より,100 Hz, 3.0 mAのtVNSが最も効果的に刺激中に最も効果的に心拍数を低下させることが明らかとなった(P = 0.005).
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交感神経活動と副交感神経活動のバランス指標であるLF/HFにおいて,女性被験者では高強度の3.0 mA tVNSを含めたコントロール以外の全ての刺激強度で,刺激前の交感神経活動の高い被験者ほど刺激中に有意に副交感神経活動が増大したのに対し,男性被験者では1.0 mA, 0.2 mAの低強度条件においてのみ同様な相関が認められた.
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