2026.01.23
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義肢装具士(ぎしそうぐし)は、事故や病気やケガ、生まれつきの障がいなどで手足に不自由のある人のために、治療や症状の軽減・身体機能の一部を補う、義手・義足や装具(サポーターやインソール、コルセットなども含む)を一人ひとりに合わせて製作・適合する専門職(医療系国家資格)です。その仕事は、既製品を渡すのではなく、体の形・動き・生活スタイル・目標に合わせてつくる「究極のオーダーメイド」。まさに“人の体の一部”をつくる仕事です。
義肢装具士の最大のやりがいは、「歩けるようになった」「スポーツができた」「自信を持って外に出られるようになった」そんな変化を、すぐそばで見届けられること。特に子どもや成長期の患者さんの場合、体の変化に合わせて何度も調整や作り替えを行います。その人の人生や成長に、長く寄り添い続ける仕事だからこそ、「ありがとう」の重みも大きく、やりがいを強く実感できます。
「我が家には決まったルールがあるんです。
『ママと二人きりの時は、お外で走っちゃいけない』というルールが。」
東京オリンピックで聖火ランナーを務めた 佐藤未希先生(新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科) に、『障がい者陸上教室』の立ち上げに携わった当時の話を伺った際の、印象的な一言だ。
「駐車場とかでね、子どもが走り出した時に、私は追いかけられないんです。危ない!と思っても、咄嗟に手をつかむことができなくて……。だから、このルールがあるんです。」
そう語りながら、ご自身の義足を見せてくださった佐藤先生。17歳の時、交通事故により右大腿部を切断し、その際に義足を製作した東江由起夫先生(同大学)の勧めで、義肢装具士を目指す道を選ばれた。
「正直、最初は“走れなくても生活に困ることはない”と思っていました。スポーツ用義足を装着して走ることも、正直怖かったです。でも、転んでもいいと覚悟を決めて挑戦してみたら、意外と楽しくて。」
日常生活で使用する義足が“安定した歩行”を目的としているのに対し、スポーツ用義足は“走るパフォーマンスを最大限に引き出す”ため、あえて特有の”不安定さ”を持つ構造になっている。地域の義足ユーザーを対象に、スポーツ義足の調整やランニング練習の指導を行い、”走る喜び”を届ける――それが『障がい者陸上教室』の趣旨だ。その立ち上げの過程で、佐藤先生が初めて、息子さんの前でスポーツ義足を着用し、走った日のことを語ってくれた。
「9歳の息子に『ママと一緒に走ろう!』って ” 初めて ” 言うことができて、息子は『ママが走ってる!』と飛び跳ねて喜んでくれて。その姿が、私の背中を強く押してくれました。」
“走る”ことをきっかけに大会への出場も増え、そこでは、さまざまな障がいを抱えながら挑戦を続ける人たちとの出会いがあったという。
「陸上競技を始めたことで、新しい出会いも含めて、世界が大きく広がりましたね。」
“できる”ようになることは、本人だけでなく、周囲の人の心や行動にも変化をもたらす。そんなことを、静かに教えてくれるエピソードだった。
義肢装具士は、
・人体の構造や動きを理解する【医療・解剖学】
・ミリ単位で調整する【ものづくりの技術】
・見た目や使いやすさを考える【デザイン力】
・3D技術など最新技術の活用【工学の知識】
これらの知識や技術を組み合わせて活かせる仕事です。「人の役に立ちたい」「生物や体育、技術や美術の科目が得意」「工作やデザインが好き」「最新の技術が好き、AI・ロボットや工学分野に興味がある」そんな想いや興味が少しでも重なっている人には、ぴったりの職業です。
高齢社会の進行、医療技術の発展、子ども向け装具の普及、スポーツ分野での需要拡大、紛争被災者への支援や技術開発など海外での活躍の場の広がり、というように義肢装具士のニーズは今後ますます増えていくことが予測されています。一方で、日本の「義肢装具士」を取り巻く環境は、
・養成校が全国で9校(うち大学は3校)と、とても少ない
・進路を決定する時期である高校生から職業の知名度が低い
といった理由から、なり手不足が続いているのが現状です。だからこそ今は、「知っている人にとっては狙い目」の専門職でもあります。
義肢装具の世界は、いま大きな技術革新の真っただ中にあります。
・3D技術を活用した、効率的かつ高精度な製作技術
・AIを搭載した電子制御義手・義足
・ロボティクス技術との融合
など、最先端技術が次々と導入されています。義肢装具士は「職人の技」だけでなく、「未来の技術」を扱う専門職として、今後さらに注目される存在です。
一方で、義肢装具は利用者一人ひとりの体や生活に合わせた「究極のオーダーメイド」。機械による大量生産では対応できず、最後の細かな調整や使い心地の確認には、必ず人の手と判断が必要です。技術によって便利になる仕事でありながら、人が必要とされ続ける仕事である点も大きな魅力です。
さらに、これらの技術進歩は機能性だけでなくデザイン性の向上にもつながり、「おしゃれな義肢」「日常生活をより快適にする義肢」など、新たなニーズも生まれています。
今後も発展が期待される、将来性の高い分野といえるでしょう。
義肢装具士は、ものづくりに関わる仕事としては珍しい国家資格です。専門的な知識と技術が国に認められているため、資格を持っていること自体が、就職時の大きな強みになります。また、義肢装具士は、病院や義肢装具製作所、リハビリ施設だけでなく、スポーツ分野や研究・開発分野など、さまざまな現場で活躍できます。資格があるからこそ、専門職として安定したニーズがあり、景気に左右されにくい点も魅力です。また、技術職として専門性の高い国家資格職であるため、技術や経験に応じて着実なキャリアアップと収入アップが見込めます。長く続けるほど評価される仕事であり、「手に職をつけたい」「将来も安心して働きたい」という高校生にとって、大きな魅力です。
義肢装具士の新卒求人は、業界団体(協会)が一括して管理しています。そのため、求人情報が集まりやすく、ミスマッチが起こりにくいのが特長です。養成校が少なく、なり手不足の状況もあり、新卒でも就職しやすい環境が整っています。
経験を積めば、自分の義肢装具製作所を開業することも可能です。「技術を磨き続けたい」「地域に根ざした仕事がしたい」など、自分らしい働き方を選べるのも、国家資格ならではのメリットといえます。
義肢装具士は、
◆ 人の体の一部をつくり「できる」を支える
◆ 人の人生に「長く」寄り添う
◆ 医療・ものづくり・デザイン・工学・スポーツを横断する
唯一無二の専門職です。知名度はまだ高くありませんが、だからこそ「知った今」がチャンス。
「人の役に立つ仕事がしたい」「ものづくりが好き」「医療やスポーツに関わりたい」そんな想いを持つ高校生にとって「義肢装具士」は、やりがいも将来性も備えた“今こそ注目すべき仕事”です。あなたの手で、誰かの“できる”を増やしてみませんか。
義肢装具士の仕事詳細はこちら:https://www.nuhw.ac.jp/career/certification/certification04.html
新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科の詳細はこちら:https://www.nuhw.ac.jp/faculty/at/
仕事が体験できる!オープンキャンパスはこちら:https://www.nuhw.ac.jp/admission/opencampus.html