テクノロジーの力を使って、
誰もが心肺蘇生できる世の中とは?
救急救命学科/准教授/大松 健太郎
Department of Emergency Medical Sciences/Kentaro Omatsu
拡張現実(AR)アニメーションを用いた救急蘇生訓練システムを開発
人の役に立つ、または人の命を守るような仕事に就きたい
命を守って人の役に立ちたいという想いから、大学時代に救急救命士の資格を取りました。卒業後は大学病院の救命救急センター職員として勤務しながら、大学院に進学して修士号を取得。後に大学の非常勤講師として教育・研究の分野に携わるようになりました。大学教員になってからは、心停止を起こした傷病者の蘇生をテーマに掲げ研究を開始しました。
誰もがいざというときに適切な行動が取れるよう、蘇生現場のリアリティをアプリに反映
世の中の技術革新が進むにつれ、ARやスマートフォンを活用すれば心肺蘇生の現場にある課題を解決できるのではないかと思い当たったのです。心肺蘇生訓練やAEDの使い方講習では、通常マネキンが使われます。マネキンは当然動きません。しかし実際の現場では、心停止を起こした人がしゃくりあげるような呼吸をするケースがあるのをご存じでしょうか。心臓が止まっているにも関わらず呼吸をしているため、一般の方からすると心臓マッサージなどの処置が必要ないように見えてしまうのです。この事象を知らないがために手遅れになってしまうケースを減らしたい。そう考えて緊急時に適切な行動が取れるよう開発を始めたのが、心肺蘇生訓練用アプリ「心肺蘇生AR」です。
今後もさまざまな異業種とのコラボレーションを通して、救急医療に貢献できるアイデアを実現したい
開発でこだわったのは、モーションキャプチャーと3Dグラフィックスを活用して傷病者の動きをリアルに再現した点です。マネキンを使った講習と実際の場面のギャップをテクノロジーで埋めようと思いました。また、アプリにすることで操作に双方向性を加え、より高い学習効果を狙いました。開発の過程では、3DCGを作る人やプロジェクトの進行管理をする人、傷病者役の役者さん、デザイナー、プログラマーなど、さまざまな人たちと協力しました。これまで関わりのなかった異業種の方々と従来ではなしえなかったことを形できたのが大きな収穫です。おかげで今このアプリは、リリース前の検証段階に来ています。次に開発を考えているのは、110番や119番の緊急通報を模擬的に練習できるアプリです。多くの人に活用してもらえば通報に対するハードルを下げられるのではないかと考えているところです。医療の現場に立つ以外にも、人の命を助ける方法は無限にあります。今後も柔軟なアイデアをもって、救命医療に貢献していきたいですね。