救急隊員の負担は
本当に仕方ないことなのだろうか?
救急救命学科/教授/竹井 豊
Department of Emergency Medical Sciences/Yutaka Takei
救急活動時の負担軽減と救急医療の質の向上に関する研究
過酷な救急現場で「隊員を守る研究」が必要だと感じた原点
救急現場では、限られた人員と時間の中で重症患者に対応するため、搬送や処置、機器操作など救急隊員に大きな身体的負担がかかります。しかし、その負担は「仕事だから仕方ない」と見過ごされがちで、科学的に評価・改善される機会は多くありません。さらに、医療機関との連携や情報伝達の難しさも日常的に存在します。現場で疲労する隊員や、過酷な活動中の事故を目の当たりにする中で、「救急隊員自身を守る仕組みを整えることが、結果的に患者の命を守ることにつながる」と考えるようになりました。こうした思いから、身体負担の軽減と救急医療体制の最適化を目指す研究を始めました。
救命率向上と安全な救急体制を支える研究の広がり
この研究の成果は、救急現場の様々な場面で活用されます。搬送や階段移動、狭い場所での処置など、負担の大きい動作を科学的に分析することで、疲労や事故を減らす具体的な方法を示すことができます。また、自動胸骨圧迫装置の効果的な使い方や人員配置、最適な搬送ルートの検討は、活動の安全性と効率を高めます。さらに、AED情報提供システムの改善は、指令室と現場を結ぶ情報の質を向上させ、救命率の向上にもつながります。将来は蓄積したデータをAIで解析し、負担予測や活動支援を行う高度な救急医療システムへの発展も期待されます。
当たり前を疑いデータで現場を支える研究の面白さ
この研究の魅力は、これまで「仕方ない」とされてきた救急隊員の身体負担や連携の課題を、データによって見える形にできる点です。現場の動きや隊員の声を数値として解析し、仮説が裏付けられた瞬間には大きな達成感があります。救急活動は状況が刻々と変化するため、単純な正解はなく、新しい分析方法や視点が常に求められます。その中で、観察結果と数値が結びつき、新たな改善策が見えてくる過程は非常に刺激的です。隊員の安全確保が患者の救命率向上にも直結するため、自分の研究が命を支える仕組みづくりに貢献していると実感できる点も、この研究ならではの醍醐味です。