成功事例を解明して創る、
「医療×非医療」の新たな未来とは?
医療情報管理学科/教授/鎌田 剛
Department of Health Informatics/Go Kamada
より暮らしやすいまちづくりを応援する、異業種コラボの事例を研究
社会福祉士として働いていた時の想いを胸に、「医療×まちの人たち」の連携事例を調査
大学3年生で「大学の研究者になりたい」という夢を抱き、社会福祉士として働きながら学費を貯め、博士課程を修了して現職に就きました。現在は、自治体における「医療×非医療」の異業種間で実現したコラボレーション事例を研究しています。たとえば、香川県まんのう町では、歯科医師・歯科衛生士などの医療者と、弁当屋、民生委員などの異業種の方々が協力して、高齢者を支える活動を行っています。お弁当屋さんは仕事柄、配達時に高齢者の異変に気付くことが多く、民生委員さんには要支援者の情報が入ってきます。それぞれ特徴を活かして、配食サービスと見守り、通院送迎などが実現しています。このテーマに興味を持ったのは、社会福祉士として働いていたときの経験がきっかけです。医療の現場では法律や制度によってできることが限られているため、「他の業種と協力すれば解決できることもあるのでは」と感じていました。対象地域を訪れ、現場の観察や関係者へのインタビューなどをもとに、複雑な連携の事象を言葉にすることが、私の仕事です。成功事例の共通点や特徴を見つけ、“なぜ成功したのか”を解き明かすことに研究の楽しさがあります。
異業種ゆえに起こる摩擦や葛藤。
「医療×非医療」を成功に導く鍵は、感情や感覚を相互に分かち合うプロセス
現在は過去の事例を継続的に観察しつつ、新しい事例を見つけては現場に足を運んでいます。異業種コラボは絶え間なく進化するので、一つの事例に終わりはありません。例えば歯科医とお弁当屋さんが協力していた地域では、今では廃校を活用して親子の遊び場を作る活動が広がっています。医療者と非医療者の間では、価値観や文化の違いから意見が対立することも少なくありません。「京介食推進協議会」では、京料理の料理人が医療者と協力して嚥下障害の方でも楽しめる会席料理や和菓子を開発・提供していますが、最初から順調だったわけではありません。料理人にとって京料理は宴席向けの料理。初めは嚥下食へ理解が十分でなく、商品化が進みませんでした。しかし嚥下障害の患者と家族を招いた試食会を開いたことで、料理人が嚥下食を理解し、その価値に気付くことができたのです。こうした共体験を通じて気付きを得ることが成功の鍵です。得られた知見を生かし、住みよい暮らしづくりの実現を後押ししたいと考えています。