すべての論文は
本当につながって読めるようになるのか?
医療情報管理学科/講師/平井 克之
Department of Health Informatics/Katsuyuki Hirai
和文論文の引用索引データベースの構築に関する研究
すべての論文がつながる世界を実現したいという原体験
研究とは、過去の成果の積み重ねによって発展していくものです。その証として、論文の末尾には必ず参考文献が示され、どの研究をもとに新しい知見が生まれたのかが記録されています。私はこの「研究同士のつながり」に強い魅力を感じました。しかし現実には、参考文献の書式が学術誌ごとに微妙に異なり、コンピュータでは単なる文字列としてしか認識できません。そのため、自動で論文同士を結びつけることが難しい状況でした。すべての論文が正確にリンクされ、知識のネットワークが一目でたどれる世界を実現したい。その思いが、この研究を始めるきっかけとなりました。
医療現場を支える知識検索の基盤として広がる可能性
この研究で開発する技術は、医療従事者が信頼できる情報へ迅速にたどり着くための基盤として活用されます。医療の現場では、治療法の根拠となる論文を確認することが不可欠ですが、日本の多くの論文データベースでは、参考文献から元の論文へ直接移動できる仕組みが十分に整っていません。そのため、医師や看護師は一つ一つ検索し直す必要があります。この研究技術により、書式が異なる参考文献でも自動で正しい論文にリンクできるようになれば、ワンクリックで必要な情報に到達可能になります。さらに、論文間の引用関係がデータ化されることで、研究動向の分析や新たな発見にもつながります。
人間の直感を数式に変える知的パズルとしての面白さ
私たちは参考文献の書式が多少違っていても、自然にタイトルや雑誌名を見分け、元の論文を探し当てることができます。この「無意識の判断」をコンピュータで再現する点に、研究の大きな面白さがあります。人間が行っているのは、単語の一致度を両方向から確かめる作業だと考え、参考文献と候補論文の単語の重なり具合を示す二つの指標を設計しました。共通語があっても不要な語が多ければ違和感を覚えるという直感を、単語のカバー率として数値化することで、複雑な文法解析を用いずに正しい論文を見抜くことに成功しました。人の思考を数理モデルへと翻訳していく過程そのものが、この研究の醍醐味です。