月経による腰痛は、対処療法ではなく
根本から解決できるのでは?
健康スポーツ学科/講師/松浦 由生子
Department of Health and Sports/Yuiko Matsuura
個人に合わせた運動療法で腰痛を改善する「オーダーメイドの対処法」
研究の道に進むきっかけは自身が取り組んでいたスポーツ
高校時代は競泳に打ち込んでいましたが、ケガを経験したことをきっかけにアスリートを支える仕事に関心を持ち、理学療法士を志しました。大学卒業後は理学療法士およびアスレティックトレーナーとして活動し、スポーツによるケガに苦しむ選手の姿を数多く目の当たりにしました。そこで、サポートにとどまらず、研究を通じてスポーツ外傷・障害の予防に貢献したいと考え、大学院に進学し、本格的に研究を開始しました。
月経の影響によってパフォーマンスが低下する女性アスリートを目の当たりにしたトレーナー活動が研究の源
研究では、スポーツ外傷・障害予防や女性アスリートのコンディショニングをテーマに取り組んでいます。支援を行う中で、女性アスリートが月経により競技パフォーマンスに大きな影響を受ける現実に直面しました。特に、月経に伴う腰痛は競技力低下の一因ですが、現状では薬の服用や物理療法が主流で、根本的な解決には至っていません。「月経による影響を軽減する方法はないか?」この問いに向き合う中で、腰痛改善のためのトレーニングが月経時の腰痛軽減にもつながる可能性を発見しました。さらに、仙腸関節の安定性が関与している可能性に着目し、適切なトレーニングが根本的な解決につながるのではないかと考え、研究を進めています。
月経による腰痛を“根本的”に解決する。アスリートだけでなく、すべての女性のQOL向上を目指して
現在、研究者兼トレーナーとして活動しています。トレーナーとしては、競泳の国際大会に出場する選手の健康管理やケガの予防に取り組んでおり、2024年にはパリオリンピックに同行し、競泳チームのサポートを担当しました。研究者としては、月経時の腰痛に対する「オーダーメイドの対処法」を明らかにすることを目的に研究を進めています。この対処法は、腰痛に影響を与える要因を特定し、個々の状況に応じたトレーニングや対処法を取り入れることで、根本的な改善を目指すものです。また、月経は筋骨格系の機能にも影響を与え、特に膝や足首の靭帯が緩むことで怪我のリスクが高まることが分かっています。しかし、女性ホルモンと靭帯の緩み、さらには腰痛との関連性については、依然として未解明な部分が多く、さらなる研究が求められます。これらの研究は月経に悩むすべての女性の支援を目的としています。薬に頼らない新たな対処法が生まれ、女性のQOL(生活の質)の向上につながれば、それ以上に嬉しいことはありません。