赤ちゃんの小さな異変を
AIは気づいてくれるのか?
看護学科/講師/佐藤 郁美
Department of Nursing/Ikumi Sato
AIと助産学で胎児の命を守る胎児心拍モニタリング研究
胎児の命を守る現場経験から生まれたAI研究への挑戦
助産師として臨床現場で働く中で、胎児の心拍を計測する胎児心拍数モニタリングの判読がいかに難しく、同時に大きな責任を伴うかを実感しました。まれに母親の心拍を胎児のものと誤って記録してしまうことがあり、その結果、胎児の危険なサインを見逃してしまった事例も報告されています。経験や勘だけに頼るのではなく、テクノロジーの力でより確実に命を守れないかと考え、AIによる信号解析に着目しました。助産師の負担を減らし、母子の安全を高める仕組みを作りたいという思いから、工学分野の研究者と協力して研究を始めました。
出産現場でAIが第2の目となり安全を支える未来
本研究で開発する技術は、出産を扱う病院やクリニックの分娩管理で活用されます。AIがセンサーから得られる信号を解析し、表示されている心拍が胎児のものか母親のものかを瞬時に判別します。さらに、胎児が酸素不足に陥った際に現れる心拍の変化を高精度で検出できることも分かってきました。将来、この技術を搭載した機器が医師や助産師の「第2の目」となり、異常を早期に知らせることで医療事故を防ぎます。人の判断を支える知能として、より安全で安心な出産を実現する基盤技術へと発展していくことが期待されています。
看護と工学が融合し直感をデータで可視化する面白さ
この研究の醍醐味は、看護学と工学という異なる分野が協力し、これまで感覚に頼っていた判断をデータとして明確にできる点にあります。ベテラン助産師が「何となく違う」と感じる微妙な心拍の変化を、AIが数値として示した瞬間には大きな驚きがありました。日常の臨床で感じていた疑問が、数理モデルによって少しずつ解き明かされていく過程は非常に刺激的です。さらに、医学・工学・情報科学など多分野の専門家が集まることで新しい発想が生まれます。AIと助産学を融合させる新領域を切り拓くワクワク感こそ、この研究ならではの面白さです。