子ども一人ひとりに合わせた
育児・教育環境を提供するには?

心理健康学科/助教/溝江 唯
Department of Psychological Sciences/Yui Mizoe

自閉スペクトラム症の子どもの言語表現に関する研究

言葉の遅れと発達の関係に着目。心理士として発達障害児に対する“言葉かけ”の重要性を認識し、研究の道へ

私はもともと心理士として、発達に偏りや遅れがある子どもの支援の現場で働いていました。子どもたちの発達の多様性や生活環境、家族の価値観の違いに触れる中で、本人やその家族に対する適切な支援の必要性を強く感じるようになりました。支援の現場で特に多かったのが「言葉の遅れ」についての相談です。言葉の遅れの原因は、子どもの特性だけでなく、生活環境との関連等、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。このことに興味を持ち、働きながら大学院に通い始め、現在まで、自閉スペクトラム症の子どもの言葉の発達過程と「人との関わり」や「環境」との関連について研究しています。

言葉の発達過程での関わり方が重要

親子の関わりの中で、大人から様々な文脈で言葉を聞くことが、子どもの言葉の発達につながると言われており、言葉の発達過程には人との関わりが重要です。私が行ってきた自閉スペクトラム症の子どもを対象とした研究では、「遊び環境」が親子間の言葉のやり取りに影響を与えることを明らかにしています。自動で動く玩具を使用した親子遊びよりも、伝統的な手動で動かす玩具を使用した親子遊びの方が、親が幼児へかける言葉の種類が豊富であることが分かりました。

自閉スペクトラムの子どもの言語表現特徴やその背景を明らかにすることが、
指導方法や支援の在り方を見直すきっかけに

現在は、自閉スペクトラム症の子どもの言語表現の特徴と、その特徴が人と関わる力とどのように関連するのかをテーマに研究を進めています。自閉スペクトラム症の子どもは、「おかえり」と「ただいま」のように、同じ場面でも立場によって使う言葉が変わることを理解することや、立場に合わせて適切に表現することが苦手です。私は、さらに「取ってもらう」「取ってあげる」といった、立場によって語尾が変わる動詞の活用形にも注目して自閉スペクトラム症の言語表現特徴を明らかにしようとしています。また、そのような言語表現の特徴と、他者の視点に立って考える力との関連についても検討を進めています。自閉スペクトラム症の言葉の表現特徴やその背景が明らかになれば、指導方法や支援の在り方を見直すきっかけにもなるでしょう。こうした研究成果を普及させることで、子どもの発達の多様性に合わせた教育環境を提供できるのではないかと考えています。

高校生へのメッセージ

私の研究は派手なものではありませんが、世界で唯一、私だけが行っている「オンリーワンの研究」です。興味があることを追求していく力は、必ず将来の役に立ちます。是非、本校で研究に触れてみてください!

心理健康学科/助教/溝江 唯
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