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【理学療法学科/卒業生の活躍】繰り返し寒冷ストレス負荷による線維筋痛症モデルラットにおいて、痛み刺激に対する脊髄ニューロンの興奮性が増大することを発見!

貝沼利矩(社会福祉法人常陽会、理学療法学科18期生)、田口徹(理学療法学科教授)らの研究論文が2023年6月27日付で「Neuroscience Research」誌に掲載されました。

今回の研究では、慢性難治性疼痛の1つである「線維筋痛症」のモデル動物を、繰り返し寒冷ストレスの負荷により作製しました。このモデルにおいて、皮膚への機械刺激や熱刺激に対する痛み関連行動が増大することを見出しました。また、化学的な痛み刺激に対しても脊髄ニューロンの興奮性が亢進することを明らかにしました。研究成果は、病態メカニズムの全容が未解明であり、有効な治療法が確立されていない「線維筋痛症」の治療や予防につながると期待できます。本研究は、中部大学生命健康科学部、日本大学歯学部との共同研究として行われました。

研究概要
線維筋痛症は、全身の恒常的な痛みを主症状とし、疲労・倦怠感、自律神経症状、睡眠障害、認知機能障害などの多様な随伴症状を呈する難治性の疾患です。これまでに、病態メカニズムの解明は不十分であり、治療法が確立されていません。
今回の研究では、繰り返し寒冷ストレスを負荷して作製した線維筋痛症のモデル動物に対し、皮膚への様々な様式の痛み刺激(機械・化学・熱刺激)に対する痛み関連行動を体系的に特徴づけました。また、化学的痛み刺激に対してc-Fosとよばれる神経活性化マーカーのタンパク質の発現が痛覚受容に重要な脊髄後角で増大することを見出しました(図)。これら一連の結果は、脊髄ニューロンの過剰興奮が線維筋痛症の患者さんにみられる痛覚過敏に重要な役割を担うことを示唆するものだと考えられます。


 

研究者からのコメント

線維筋痛症は、本邦に約200万人の患者さんが存在し、欧米でも人口の約2%が罹患するとされています。症状が進行すると、痛みのために自立生活は困難となり、生きる気力がなくなるほどのつらい病気です。
本研究ではその痛みの基礎的研究に役立つ動物モデルをさらに特徴づけ、脊髄での仕組みの一端を明らかにすることができたと考えています。
今後、線維筋痛症のさらなる病態メカニズムの解明を通じ、その治療や予防に有効なリハビリテーションや創薬を目指した研究を展開したいと考えています。

 

原論文情報
Teruaki Nasu, Riku Kainuma, Hiroki Ota, Kazue Mizumura, Toru Taguchi. Increased nociceptive behaviors and spinal c-Fos expression in the formalin test in a rat repeated cold stress model. Neuroscience Research, 2023. (in press)
DOI: https://doi.org/10.1016/j.neures.2023.06.010