この度、本学健康栄養学科の森博康講師と、大学院健康栄養学分野修士課程2年生の胡佳晟さんが解析した、『2型糖尿病のある方のサルコペニア肥満の臨床的特徴』に関する研究成果が、Asian Association for the Study of Diabetesの公式ジャーナルである、『Journal of Diabetes Investigation』に公開されました(2026年7月)。
【研究概要】
本研究は、徳島・大阪・兵庫県内の7つの医療機関を対象に、1型および2型糖尿病のある方の筋障害と生活習慣や健康関連QOLなどを調査した、多施設共同研究 『iDIAMOND study』 の臨床データを2次利用した研究成果です。
【研究成果のポイント】
2型糖尿病のある方は、糖尿病ではない方と比べ、サルコペニア肥満の該当率が有意に高率でした
2型糖尿病がある方でサルコペニア肥満の群は、身体的QOLや歩行速度が低く、身体活動量は少なく、複数転倒の既往率は高率でした。
【研究者のコメント】
1型および2型糖尿病のある方は高血糖や末梢神経障害、終末糖化産物の蓄積、内因性インスリン分泌の低下などにより、骨格筋量や筋力が低下しやすいことが報告されています(Mori H, et al. Journal of Diabetes Investigation, 2021)。近年、骨格筋量と筋力が低下した『サルコペニア』と、体脂肪が過剰に蓄積した『肥満』を、同時に併発した状態を『サルコペニア肥満』として、定義されています。
2024年に日本肥満学会と日本サルコペニア・フレイル学会による合同ワーキンググループ(JWGSO)が、『日本におけるサルコペニア肥満の診断基準』を作成しました。しかし、当時は、本診断基準をもとに、サルコペニア肥満(筋肉量と筋力の低値+体脂肪の高値)を合併した糖尿病のある方の臨床的特徴を明らかにした研究報告はありませんでした。
そこで、新潟医療福祉大学健康栄養学科の森博康研究室と、徳島大学糖尿病臨床・研究開発センターと共同研究を行い、サルコペニアや肥満を高率に併発する2型糖尿病のある方を対象とした、サルコペニア肥満の臨床的特徴を明らかにすることにしました。
データ分析の結果、2型糖尿病のある方は、糖尿病ではない方と比べ、サルコペニア肥満の該当率が有意に高率でした(2型糖尿病のある方:4.9%、糖尿病ではない方:0.5%)。また、2型糖尿病がある方でサルコペニア肥満の群は、身体的QOLや歩行速度が低く、身体活動量は少なく、複数転倒の既往率は高率でした。多変量解析の結果、2型糖尿病ありや、高齢、BMIの高値、身体活動量の低下が、サルコペニア肥満合併ありの独立したリスク因子であることが明らかになりました。
2型糖尿病のある方のサルコペニア肥満を寛解するための治療方法を創出するためには、ランダム化比較試験を用いた臨床試験を実施する必要があります。今後は、2型糖尿病のある方を対象にした、エネルギーやたんぱく質などを適切にコントロールした食事療法と、運動療法を組み合わせた臨床試験を計画しています。
これまでに、iDIAMOND studyは、徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター主導のもと、2型糖尿病のある方のサルコペニアやダイナペニアの臨床的特徴や、1型糖尿病のある方のサルコペニア合併状況、1型糖尿病のある方の内因性インスリン枯渇に伴う血清IGF-1低値と骨格筋量低値との関連性など、数多くの臨床研究の結果を明らかにしてきました。本研究にご協力・ご助言頂いた皆様に心より感謝申し上げます。
【原論文情報】
Mori, H., Ko, K., Notomi, S., Yoshida, S., Yasuda, T., Umayahara, Y., Shimizu, S., Ryomoto, K., Yoshiuchi, K., Osawa, S., Yamamoto, T., Kuroda, A. and Matsuhisa, M. (2026), Clinical characteristics of Sarcopenic obesity in Japanese people with type 2 diabetes: A post hoc analysis of the sub-cohort iDIAMOND study. J Diabetes Investig. https://doi.org/10.1111/jdi.70383
【ジャーナル名】
Journal of Diabetes Investigation
【研究者情報】
新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科
講師 森博康