診療放射線学科の小原先生、関本先生らの研究グループは、X線検査で用いる放射線量を、実測データとモンテカルロシミュレーションを組み合わせて予測する方法を検証しました。実際のX線の性質に計算条件を合わせ、実測値を基準に補正することで、空気中だけでなくアクリルやアルミニウムを透過した後の放射線量も、実測値と概ね一致して予測できることを示しました。
本研究成果は、医学物理学分野の国際学術誌『Medical Physics』にResearch Articleとして掲載され、2026年9月18日にオンライン公開されました。
◆研究成果のポイント
1. 病院で使われるX線撮影装置を用い、50、80、120 kVの3種類の条件で、空気中の放射線量を計102条件測定しました。
2. 実測した「半価層(X線の透過しやすさを表す指標)」に合うようにX線の計算条件を調整し、さらに測定値を基準としてシミュレーション結果を補正しました。
3. 基準となる空気中の測定データから、アクリルやアルミニウムを通過した後の放射線量を予測しました。
4. 2種類のモンテカルロ計算コードで検証した結果、予測値は実測値と概ね一致し、最大の平均誤差は約7.8%でした。
用語の説明
モンテカルロシミュレーション:放射線がどのように進み、物質と反応するかを、コンピュータ上で多数の試行を行って計算する方法。
半価層:X線の量が半分になるまでに必要な物質の厚さ。X線の透過しやすさ(線質)を表す指標。
空気カーマ:X線が空気に与えるエネルギーの大きさを表す量で、X線の線量評価に用いられます。
PHITS・EGS5:放射線の動きを計算するためのモンテカルロシミュレーション用プログラム。
◆研究者のコメント
X線検査の放射線量をコンピュータ上で定量的に予測するには、実際の装置が出すX線の性質と計算モデルの差を小さくすることが重要です。本研究では、実測値を計算に結びつける方法を示しました。今後、異なる装置や材質、散乱線などへの検証を進めることで、実測が難しい条件での線量評価や装置管理への応用が期待されます。
◆原論文情報
Yusuke Obara, Michiharu Sekimoto, Toyohiro Kato Measurement-anchored Monte Carlo prediction of diagnostic x-ray air kerma using HVL-matched spectra and per-electron normalization Medical Physics 2026年9月18日(オンライン公開)
DOI: 10.1002/mp.70679
◆研究者情報
診療放射線学科 助教 小原 佑介
診療放射線学科 教授 関本 道治