本学大学院医療福祉学専攻の板垣和弘さんらによる、最新鋭の前眼部光干渉断層計を用いた臨床データから白内障手術後のレンズ位置を推定する新たな予測式を含む論文が、国際的な眼科専門誌『BMC Ophthalmology』に掲載されました
◆研究概要
白内障手術では濁った水晶体を人工レンズ(IOL)で置き換えます。IOLには様々な強さ(度数)のものがあり、正しい度数のレンズを選択しないと、手術後のピントがずれてしまいます。レンズの強さを決めるためには手術に先立って、IOLの術後予測位置を精密に求めなければなりません。術後IOL位置の予測式はこれまで複数提唱されてきましたが、本研究では近年開発された前眼部光干渉断層計の結果を用いて、新たな予測式を提唱・検証しました。まず、眼球後部を円(球)と考え、計測値を用いてその直径(Dpc)を計算します。この値と、実際に手術した後のIOL位置(術後IOL位置)を照らし合わせた結果、目の大きさにかかわらず、術後IOL位置は目の後ろから、Dpcの約89.5%だけ前に出た部位に固定されることがわかりました。この性質を用いると、少ない計測値から、従来法と遜色のない精度で術後IOL位置を予測することができます。特に、角膜の計測値を用いないため、円錐角膜やLASIKによって角膜形状に変化があっても高精度に術後IOL位置を計算できます。
◆研究のポイント
①術後IOL位置の新たな予測法を考案・検証
眼球を幾何学的に解釈しなおし、後方を円(球)とみなして、術後IOL位置と円との関係を明らかにしました。
②角膜計測値を必要としない
これまでの術後IOL位置予測式よりも少ないパラメタで遜色ない予測が可能です。特に角膜形状(曲率半径など)の計測値を用いません。
③将来の白内障手術の改善に寄与することが期待されます
術後IOL位置予測だけではIOL度数を決定することができません。今後、白内障手術臨床への応用を試みます。
◆研究者コメント
本研究は、眼科クリニックで視能訓練士として日々眼の形態を計測する中で生まれた疑問をきっかけに始まりました。臨床の現場には、研究につながる多くの疑問や気づきがあります。本研究が、臨床で働く視能訓練士が日々の疑問を研究につなげる一つのきっかけになれば嬉しく思います。今後は異なる眼内レンズや施設で検証を重ね、将来的には眼内レンズ度数計算への応用を目指します。
◆原論文情報
Itagaki K et al. Ocular geometry-based formula for predicting the intraocular lens position after cataract surgery using anterior segment optical coherence tomography. BMC Ophthalmology, in press (early-access version公開済 )
DOI: 10.1186/s12886-026-05374-8
◆研究者情報
医療福祉学専攻・博士後期課程・板垣和弘
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※本研究は長岡眼科および松本眼科のご協力のもとで実施しました。