卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。大学院修了生の皆さん、修了おめでとうございます。新潟医療福祉大学の教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。ご臨席の保護者・ご家族の皆様におかれましては、ご子息・ご息女の晴れのご卒業・修了を、さぞお喜びのことと存じます。心からお祝い申し上げます。
本日卒業なさるのは、理学療法学科115名、作業療法学科45名、言語聴覚学科37名、義肢装具自立支援学科37名、臨床技術学科90名、視機能科学科53名、救急救命学科59名、診療放射線学科79名、健康栄養学科42名、健康スポーツ学科240名、看護学科123名、社会福祉学科120名、医療情報管理学科98名の計1,138名、大学院を修了なさるのは修士課程67名、博士後期課程18名の計85名の皆さんです。本学は2001年の開学以来、今回で16,465名の卒業生、818名の大学院修了生を社会に送り出してきたことになります。
近年、医療・福祉分野では、新潟県内の公的病院における巨額の赤字や診療科の休止、病棟の廃止などのニュースが報じられています。こうした状況では、皆さんが医療・福祉分野の将来に不安を感ずるのも無理はありません。しかし、心配は要りません。
人口の減少に伴い、病院における外来診療・入院診療の規模は今後縮小して行きますが、その一方で、在宅診療・訪問診療の需要はますます高まります。医師は拠点施設に集約される中で、地域の現場で住民の健康を維持する役割は、保健師、療法士、管理栄養士、社会福祉士などの多職種の専門職で構成される医療チームが担うことになります。さらに医療・福祉の分野では、AIの利活用が一層進みます。このような変化の見通しを踏まえれば、汎用AIを駆使しながら、多職種の専門職と連携・協働できるQOLサポーターは、これからの地域社会において、なくてはならない人材であり続けるのです。
新潟医療福祉大学はこうした時代の変化を先取りして、教育と研究を着実に進めています。本学で4年間学び、社会から求められる能力を身に付けた皆さんは、地域における医療・福祉・スポーツ分野を担う人材として、益々必要とされ、活躍できることは疑いありません。
本学では在学中に修得すべき5 つの能力を「STEPS 」と定義しています。重要な内容なので、改めて「STEPS」を示します。第1 のS は「科学的知識と技能を学び続ける力(Science & Art )」、次のT は「チームワークとリーダーシップを発揮する力(Teamwork & Leadership )」、次のE は「対象者を支援する力(Empowerment )」、次のP は「問題を解決する力(Problem-solving)」、最後のS は「自己実現を達成する力(Self-actualization)」で、この5 つの単語の頭文字が「STEPS 」です。
皆さんは在学中にこの5つの「STEPS」を修得しようと努めてこられたことでしょう。しかし、この5つの能力は本学を卒業するための目標に留まるものではありません。卒業後もさらに学び続けることによって、「誰かの役に立ち」、そして自己実現を達成して欲しいと願っています。
新潟医療福祉大学の建学の精神は、優れたQOLサポーターを育成し、地域社会に貢献し、国際交流を促進すると謳っています。優れたQOLサポーターとなるためには、他者に共感できる能力が必要です。誰かの役に立とうと志す背景には、その人のことを気遣い、慮る気持ちがあるのです。このように他者を慮ることを「他を利する」と書いて利他といいます。利他主義は、フランスのオーギュスト・コントが利己主義エゴイズムに対峙する概念として19世紀半ばに定義したとされています。他者を意味するフランス語に由来するaltruismを、わが国では、もともと仏教用語である「利他」と訳したのです。ということは、わが国ではコントが利他主義を定義する千年も前から、利他という考えが存在してきたことになります。
仏教の世界では、伝教大師最澄は「忘己利他」と教えています。己を忘れて、他を利すると書きますから、他を利するために、まず己を控えるという自己犠牲が求められているのです。最澄の前に、利他という言葉を初めて用いたのは、弘法大師空海とされています。空海は「自利利他」と唱え、自らを利すること、すなわち自己を深めることと、他者を利することは一つであると教えています。自他ともに、一体として成就されるというのです。己を忘れるという利他主義に否定的な人たちも、これならば受け入れやすいのではないかと思います。
皆さんの多くは、これからさまざまな分野で、クライアントのQOLを支える専門職として、他の専門職と協働して活動することになります。ともに働くためには、他の専門職を尊重し、互いに支え合う必要がありますから、ここにも他者を気遣うという利他の精神が求められているのです。利他という言葉は、これから長い人生を歩んで行く皆さんにとって、鍵となる大切な言葉です。
私たち新潟医療福祉大学の教職員は、皆さんの在学中にこうした想いを伝え、言わば種を巻いてきました。今日、晴れの卒業・修了を迎えられた皆さん、今度は皆さんの番です。皆さんがこの素晴らしい種を巻く番です。新たな種を撒き続け、皆さんの想いを次の世代に伝えてください。
保健・医療・福祉・スポーツの分野で、限りなく輝かしい未来が皆さんの活躍を待っています。新潟医療福祉大学は、皆さんの卒業・修了後も最大限の支援を続けます。優れたQOLサポーターとして、皆さんが社会で大いに活躍してくださるよう、祈念して止みません。
末尾に、学長から皆さんに「はなむけの言葉」を送り、卒業式・修了式の学長式辞とします。
「明日、この世がなくなってしまうとしても、私は今日もリンゴの木を植える」
2026年3月17日 新潟医療福祉大学学長 西澤正豊