特色
大学概要
学部・学科
キャンパスライフ
就職・資格
入試情報

TOPICS

【言語聴覚】原 修一教授の研究論文が和文誌『音声言語医学』に掲載!

2025.05.15 新着情報 研究情報

原 修一教授の研究論文が和文誌『音声言語医学』に掲載されました!

本研究は、本学言語聴覚学科教員である原 修一教授が、宮崎県北部地域で9年間実施し、
就学前のお子さんを対象としたことばの教室に来所した発音の障害を持つお子さんの特徴をまとめたものです。
研究費:科学研究費助成事業 基盤研究(C)

◆研究概要
日本語の発音は、幼児の頃に年齢とともに順番に獲得しています。例えば「ぱぴぷぺぽ」は、早くから獲得されますが、「さしすせそ」は、就学直前の5歳から6歳頃に獲得されることが多いです。しかし、小さい頃に中耳炎を繰り返すことや言葉の発達が遅いなどにより、発音の獲得年齢が来ているのに上手く発音できないお子さんもいます。この状態を構音障害といいます。一方、明らかに原因がないのに、発音をうまく習得できない構音障害があります。これを機能性構音障害と呼びます。
市町村の中には、乳幼児検診でお子さんのことばや発音の遅れ、吃音(どもり)などのことばの問題をとらえ、市町村で運営することばの教室へつなげ、言語聴覚士(ST)による指導を行うシステムがあります。宮崎県北部地域では、3市町村合同の母子保健事業による「ことばの教室」がありました。私は9年間、STとして言葉の教室で114名のお子さんに対して指導を行いました。今回、指導したお子さんの中で、発音の障害(構音障害)を持っていた81名のお子さんを対象に、記録を基に、構音障害のタイプ、相談・指導を開始したきっかけや、相談指導の流れがどのようになっていたかなどを調査しました。

◆研究成果のポイント
1.構音障害のタイプ
発達途上によく見られる誤り(例 さかな→しゃかな、かな)を認めたお子さんは53名、単語が作られている音の配列が逆になったり、前後の音につられて同じ音を発音するような誤りを(例 てれび→てびれ 、コップ→ップ、)するお子さんが16名、本来は唇や舌の前方で発音するのに、のどの奥や舌の後方で発音するような発音の操作をする(声門破裂音、口蓋化構音など)お子さんが8名いました。ことばの遅れと共に発音の発達が遅れているお子さんが4名いました。

2.構音障害の原因
原因が明らかにあるお子さんは5名でした。前述の通りことばの遅れを認めたお子さんが4名、口の中に器質的な原因(鼻咽腔閉鎖機能不全)があり、のどの奥で発音(声門破裂音)をするお子さんが1名でした。中耳炎に罹患したことのあるお子さんが8名いましたが、お子さんの発音の評価の時点では治っていました。その他のお子さんは、発音の問題を生じる原因を認めませんでした。

3.ことばの相談室に来たきっかけ
乳幼児健診をきっかけにSTの指導への依頼があった対象児は65名(80.2%)でした。 3歳児健診が32名と最も多く、次いで5歳児検診が27名、2歳児歯科健診が4名、小学校に上がる前の就学時健診が2名でした。一方、乳幼児健診以外をきっかけとした依頼は16名(19.8%)でした。内訳は、ご家族からの相談が9名、幼稚園・保育園からの情報提供が3名、市町村内の他の事業からの情報提供が1名、不明が3名でした。

4.ことばの相談室での指導状況
相談室の中でSTによる指導を終了したお子さんが56名、病院での訓練や他の市町村の事業に依頼・移行したお子さんが12名、就学により指導が終了したお子さんが10名、調査期間以降もST指導を継続したお子さんは3名でした。就学により指導が終了したお子さん10名のST評価開始時期は、5歳児健診が7名でした。この10名の平均指導回数は、他のお子さんの平均指導回数と比較して多かったです。

◆研究者のコメント
本研究の対象となった中山間地域に該当する地域には、小児担当のSTがいる施設は1 施設のみであり、県内の他市町村の小児担当のSTがいる施設までが最長で約70 km 離れ、かつ利用可能な交通公共機関は少ない状況でした。中には、県内よりも近い隣県の小児施設でSTを受けることが望ましい場合もありました。従って、ことばの教室でのST指導は、該当地域在住の構音障害児や保護者にとって、身近な場所でSTの指導が受けることのできた非常に重要な資源であったと考えます。
この調査のことばの教室を受けるきっかけになったのは、約8割のお子さんが乳幼児健診でした。STが乳幼児健診に参加して、ことばの面の評価を行う市町村が増えてきました。今後も、乳幼児健診にSTに参加して、近隣の病院などと連携してことばの療育ができるシステムづくりがますますできると良いと思います。また、10名のお子さんが就学によりことばの教室が終了となりましたが、早期からことばの教室を利用できるシステムや、STが小学校の担任や校内のことばの教室の先生と積極的に連携していくことも、今後必要になると思います。

◆原論文情報
原 修一 中山間地域における市町村母子保健事業を利用する構音障害児の特徴―9年間の事業から―音声言語医学66:78 ─ 85,2025

◆研究者情報
リハビリテーション学部言語聴覚学科
教授 原 修一
専門分野: 摂食嚥下障害、小児の構音障害。現在は、情報通信技術(ICT)を用いた小児の発話機能や構音障害に関する情報コンテンツの開発に取り組んでいます。

言語聴覚学科のHPはこちら