視機能科学科6期生・松井千洋さん(福井大学医学部附属病院/大学院生・健康科学分野)のデジタルデバイス使用と視力・屈折との関係を比較検討した研究論文が、子どもの保健雑誌『チャイルドヘルス』に掲載されました。
◆研究概要
新型コロナウイルス感染症のパンデミック前後における幼児のデジタルデバイス使用と視力・屈折との関係を比較検討しました。
新潟市内のこども園に通う幼児を対象に、2017年度から2021年度までの5年間にわたり調査を行った結果、デバイスの利用時間は年々増加している傾向が見られました。しかし、視力や屈折度数との有意な関連は認められませんでした。
本研究は、近年、幼児の視的環境の変化が著しいことを背景に、今後も視機能への影響を継続的に観察する必要性を示唆しています。
◆研究成果のポイント
1. 視覚野の感受性が高い幼児期において、年齢とともに視力は向上する傾向があるが、近年の子どもではその向上が鈍化している可能性がある。
2. 1日2時間以上のデジタルデバイス使用が、視力や屈折にただちに悪影響を与えるわけではないが、継続的な視機能のモニタリングが重要である。
◆研究者からのコメント

学部入学後から卒業まで、一貫して「子どもの視機能」に関するフィールド調査および解析に取り組んできました。今回、その集大成として研究成果を論文化することができ、大変嬉しく思います。
本研究の結果から、デジタルデバイスの利用時間が増加しても、短期的には屈折に大きな影響を与えない可能性が示されました。一方で、視機能への影響は多因子的であり、長期的な観察が必要であること、また屋外活動や適切な視的環境の整備が近視進行の抑制に有効である可能性も示唆されました。
大学院ではこの研究をさらに発展させ、子どもの視的環境と視機能との関係性の解明に引き続き取り組んでいきたいと考えています。
◆原論文情報
松井千洋,石井雅子: 幼児の視機能―COVID-19パンデミックの影響―.チャイルドヘルス.2025;28(7).66-71.