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【臨床技術】希少疾患“ファブリー病”の診断において「臨床的に疑う力」と 「目的を持った尿沈渣鏡検」が重要であることを示した3世代家系の症例報告

2026.05.20 新着情報 研究情報

この度、東京女子医科大学の加藤悠花医師、新潟医療福祉大学臨床技術学科の横山貴教授、東京女子医科大学の眞部俊講師、星野純一教授は、希少疾患であるファブリー病の診断において、「臨床的に疑う力」と「目的を持った尿沈渣鏡検」が極めて重要であることを示した3世代家系の症例報告を発表しました。
この報告は2026年3月17日付けで国際学術誌BMC Nephrologyに掲載されました。

【概要】
Fabry病は、進行すると腎不全・心不全・脳血管障害を引き起こす遺伝性疾患です。しかし、症状が多様であることから診断まで長期間を要するケースが少なくありません。
今回の研究では、左室肥大疑いと軽度蛋白尿を認めた61歳女性を対象としました。最初の検査では、最新の尿中有形成分分析装置および通常の尿沈渣鏡検でも異常所見は検出されませんでした。ところが、問診からFabry病の家族歴が判明し、臨床医と臨床検査技師が情報共有したうえで、「Fabry病を疑って」再度尿沈渣を詳細観察したところ、特徴的なマルベリー細胞・マルベリー小体を発見。遺伝子検査によってFabry病と確定診断されました。さらに、無症状だった32歳の娘、7歳の孫についても、通常検査では検出されなかった所見をターゲット鏡検で確認し、家系内診断につながりました。

【研究成果のポイント】
近年、臨床検査室では自動分析装置やAI技術の導入が進んでいます。一方で本研究は、尿中有形成分分析装置ではFabry病特有の成分を見逃す可能性があり、目視ルーチン鏡検でも疑っていないと検出困難であること、臨床情報が尿沈渣診断能を大きく左右することを明確にしました。そのため、臨床医と臨床検査技師との情報共有が診断の鍵になります。さらに、マルベリー細胞数は、病勢や治療効果(ERT・migalastat)とも相関した可能性が考えられました。尿沈渣検査は単なるルーチン検査ではなく、病態を映し出す liquid biopsy であることを示しました。今回の成果は、AI・自動化が進む時代においても、特にFabry病のような稀少疾患では、臨床を理解する力・病気を疑う視点・臨床医と臨床検査技師の連携や人の目による目的を持った形態観察が、患者の早期診断と治療介入に不可欠であることを示しました。

【研究者のコメント】
◆新潟医療福祉大学臨床技術学科 横山 貴教授
近年、臨床検査の現場ではAIや自動分析装置の導入が急速に進み、効率化や標準化が大きく進歩しています。しかし今回の研究は、自動化だけでは拾いきれない病気があることを示した重要な症例であると考えています。
Fabry病のような希少疾患では、単に検査を行うだけではなく、この患者さんに「何が隠れているのか」を考えながら観察する姿勢が極めて重要です。実際に本症例では、自動分析装置でも通常の尿沈渣鏡検でも見逃されていた所見が、臨床医と臨床検査技師が情報を共有し、『Fabry病を疑って見る』ことで初めて発見されました。
尿沈渣は単なるルーチン検査ではなく、患者の病態を映し出すliquid biopsyです。そして、その価値を最大限に引き出せるのは、病態を理解し、目的を持って観察できる臨床検査技師の“目”だと考えています。
AI・自動化時代だからこそ、人にしかできない「気づく力」「疑う力」「観察する力」の重要性を、今回の研究を通して改めて発信できればと思います。


「Fabry病を疑って」尿沈渣を詳細観察したところ発端症例およびその娘、孫にマルベリー細胞・マルベリー小体を発見した。


本症例で認めたマルベリー細胞(左)およびマルベリー小体(右)。

【原論文情報】
Haruka Kato, Takashi Yokoyama, Shun Manabe, Momoko Seki, Yusuke Ushio, Shiho Makabe, Shizuka Kobayashi, Hiroshi Kataoka, Kosaku Nitta and Junichi Hoshino.
Clinical awareness and targeted manual urine microscopy enable diagnosis of a fabry disease family missed by routine urinalysis.
BMC Nephrology (2026) 27 : 260 ; https://doi.org/10.1186/s12882-026-04899-w